Uさんがまだ小学生の頃、友人と遊んでいたときに奇妙な事があったらしい。
それは秋の日の夕暮れの事。彼は友人と携帯ゲーム機で遊んでいた。対戦をしていたのだが、あの頃にあったのはそろそろ暗くなってくる時間の事だ。
Uさんは家に帰っても誰もいないので仕方なく帰っていく友人たちを見送りながら公園のブランコに乗っていた。
誰もいない公園でも、まだ誰もいない家の自室よりマシかと思い一人でブラブラ揺れながらゲームをしていた。
そんな時、彼は声をかけられた。
「お兄ちゃん、それ何?」
なんだか酷くボロボロの服を着た少女に声をかけられた。ゲームだよと言うと『ふぅん』と言って滑り台の方に行ってしまった。登っては滑っていく様を横目に見ながら、何が楽しいのかな? と不思議に思いつつゲームの画面に目をやると、もう暗くなっておりバックライトのないゲーム機の画面はほとんど見えなかった。
渋々帰ろうとすると少女がこちらを見ているのに気がついた。少女は一緒に帰りたがっているのかなと思っていたが、そこへ祖母がやって来た。
「コラ! アンタはここにいちゃダメでしょ!」
祖母はそんなに怒っているとこを滅多に見せなかったのに、その少女に対しては厳しい目を向けていた。
そしてUさんの手を引っ張り公園を連れ出した。それから、『あの子と話をしちゃダメよ』と有無を言わせぬ雰囲気で言う。
「あの子は誰なの?」と無邪気に聞くと、『あれはねえ……おばあちゃんのお姉さんなの』と言っていた。
当時は意味が分からなかったのだが、祖母は戦前生まれなので当時あのくらいの姉がいても不思議ではなかった。ただ、何故彼の祖母がずっと姉と一緒なのかは聞けずじまいだったそうだ。