その日、Bさんが職場からの帰りがけにスーパーに寄ったときの事だ。その日は残業だったので遅くになってしまい、もう客はほぼいなくて、店員が品出しをしているところだった。
二十四時間営業のありがたさをその身に感じながら、赤いラベルの炭酸飲料をカゴに放り込んで糖分たっぷりのチョコを何枚か買ってレジに持っていった。まともな食事を放棄しているあたり末期だなと自分でも思いつつ、職場が悪いからと無理矢理自分を納得させて帰宅した。
そうして炭酸飲料を飲みながらチョコをかじる。一瞬糖尿病と言う言葉が頭に浮かんだが、ストレスが体調を悪化させると聞いた事があったそうで、ストレス解消になれば体調が良くなるからセーフだと自分に言い聞かせて食べて飲んで寝た。
その晩、夢を見た。その夢には懐かしい爺さんが出てきたのだという。爺さんは恰幅の良い格好で枕元に立っていた。なんだろうとぼんやりしていたのだが、そう考えていると突然こちらは寝ているというのに頬を張られた。
そこで夜中に目が覚めた。チョコと炭酸のカフェインのせいだといえなくも無いのだが、頬がヒリヒリする事と、自分の祖父が長い間糖尿病を患っている事を考えると無関係とは思えなかった。
「それからは多少健康に気をつかってるんですよ」と彼は言う。週末にはジムに通う生活をしているし、一駅前で降りて歩く程度には運動を始めたそうだ。
ただ、困っている事は、それをサボったときに朝頬がヒリヒリして鏡を見ると赤くなっている事だそうだ。
祖父は随分と優しい方だったそうだが、自分が苦しい目に遭ったので孫を同じ目に遭わせたくないのだろうというのが彼の意見だ。