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SS:見知らぬ町と老人

 Lさんが最近近所を散歩していたときの事。いつも散歩をしているのに、何故かその日に限って道に迷ってしまった。間違いなく自分の住んでいる町で、知らない道など無いはずなのに何故か迷った。
 さまよい歩いていると、一人の老人が声をかけてきた。
「お前さんがワシを呼んだ者かいのう?」
 そう言われたので思わず『いえ、人違いでは?』と答えた。自分でさえ道に迷っているのでこの見た事のない老人の案内をするのも無理だ、誰に呼ばれたのかは知らないが他の人を頼ってほしい。
「そうか、お前さんじゃと思ったんじゃが……」
 そう言うと、突然強風が吹いて木の葉が舞った。思わず目を閉じると、次に開けたときにはその老人はいなかった。奇妙に思った瞬間頭に激痛が走り意識が途切れた。
 次に目を覚ましたのは病室だった。先生の話によると家を出たところで脳出血を起こして倒れていたという事だ。脳出血と聞き、だから迷ったのかと思ったが、見つかった場所は家のすぐ前だったという。
 一命を取り留め、後遺症は指先にほんの少しの麻痺が残るだけで住んだのだが、Lさんはあの時見たのが死神で、肯定していたらあの世に連れて行かれただろうと信じているそうだ。
『しかし死神も耄碌するんだなあ……』
 彼は懐かしい思い出を語るようにそう言った。

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