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SS:ランニングコスト

 Mさんは写真を取るのがすきなのだそうだが、時折この世のものではないものが映り込んでしまう事があるそうだ。
『あれは先月だったかな……川のほとりで水鳥を撮影しようと構えてたんだ』
 じっくり腰を据えてたまに飛んでくる鳥を撮影していた。残念だがこの川にはカワセミのような映えるものはやってこないが、地元の写真を撮影するには割といい場所だった。
 結構なお歳なのだが、カメラで撮った写真をスマホに転送して、それをSNSにアップロードしていいねをもらっているそうだ。
 時代に合わせて写真を見てもらう場は変えているという。そんな時の出来事なのだが、写真を撮影してそれを家に帰って現像とレタッチをしてスマホに入れようとしていた。そんな時、川のほとりに白無垢を着た女が写っていた。
 またこの手のものかとうんざりしつつその女の写真を無言で削除した。
『度胸があるって思うか? この趣味やってるとこの程度のものよく写るんだよ。一々あんなもの相手してたらキリが無いし、写真は削除して終わりなんだがなあ……』
 少し間をおいて彼は愚痴った。
『毎回この手の物が撮れると寺にSDカードの供養を頼むんだけどなあ……カメラが結構いいやつ使ってるだけに、保存するのに結構な値段がするSDがいるんだよ。変なものに憑き纏われたくはないが、こんな頻繁にダメになってると嫌気も差してくるんだよな。ああ、アンタ謝礼をくれるって話だからな、その金で新しいSD買おうと思ってるんだ。ところでこれが例のブツなんだが見るかい?』
 そう言って彼は一枚のSDカードを差し出してきた。私はどうせお祓い案件なのだからと申し訳ないが固辞した。
 彼は『だよなあ!』と愉快そうに言って謝礼をもらって帰った。彼は未だに趣味を辞めるつもりは無いようだ。

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