Yさんの娘さんが最近奇妙な事を言いだしたそうだ。話によると知らないはずのことを話すのだと言う。
はじめは娘さんが『じいじ、じいじ』と言うので驚いた。娘が生まれてすぐに祖父は待っていたかのように亡くなっていたからだ。娘の顔を見て喜んだあとすぐ、眠るように息を引き取ったのだが、当然娘にそんな頃の記憶は無いと思っていた。まだ新生児と言ってもそう変わらないであろう時期の記憶があるのだろうか?
とはいえ、これだけなら記憶力がいいだけで済むのだが、育っていくに従っていろいろなことを言い始めた。
突然昔、まだ娘が生まれていないときに亡くなった親戚が来ていると言い出したり、近所の人が挨拶に来たと言うので玄関に行くと誰もおらず、数日後にそのご近所さんが急死するといった縁起でもないことが普通に起きた。
怖くなったYさんは娘にそういうことは言う物じゃないと言ったのだが、まだ物心の付いていない年の子供に分別を付けろというのも無理があった。
幼稚園に入る頃には娘はそんなことを言うことはなくなった。ただ、一つだけどうしても心配なことがあると言う。
「娘がね……少し前に大泣きしたんですよ。何も起きていなかったはずなんですけど突然泣き出してなだめすかしても泣き止まなかったんです。それから……娘が私に妙に懐くんですよ。その……もしかしたら娘には私が……いや、なんでもないです」
彼はそれだけ言って話を終えた。少なくとも彼から今年の年賀状は届いたので無事のようだ。