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SS:気軽に乗れない

 Gさんが車を運転していたときのこと、彼の運転する自動車の前に白装束の髪を振り乱した女が現れた急ブレーキを踏んでハンドルを切り、なんとかかわしたのだが、どう考えてもまともな女ではない。
 幽霊か自殺志願者か、何にせよロクなものではないが、後者だった場合警察への通報も必要だろう。災難だな……と思いながら車から降りてあの女のいた周辺を積んでいたライトで照らした。
 しかし誰もいない。じゃあ幽霊だったんだなと安易な考えに切り替えて、轢いたわけでも無いなら知ったことかと車に乗ってそのまま車道を走って帰宅した。
 そして家に入ろうとしたところ、奥さんが出迎えてくれた。『ただいま』と言おうとしたところでいきなり粉をかけられて、口の中が塩っぱくなったのでそれが塩だと気づいた。
「まったく! 余計なものを持ってきて! ほら、仏壇を拝むから付いてきて!」
 そう有無を言わさず仏壇の前に座らされ、妻の読むお経を全て読まされて終わったときに体が少し軽くなった。それから妻に小一時間説教をされ、車に乗るのは構わないが、通り道に曰くが無いかくらいは調べろと懇々と言われた。
 それから一人でドライブに行こうとすると、妻からせめて一週間くらいの新聞を調べておきなさいと言われた結果、彼が大好きだった夜のドライブはすっかり無くなった。

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