Yさんは少し前、美術館に行ったのだが、そこで何とも奇妙なものを見たそうだ。そこでは立派な絵画が飾ってあるのだが、その絵を見るために美術館に入ると、一番の目玉と言うことで、目立つところに展示されていた。
それを鑑賞していたのだが奇妙な事に気が付いた。その絵は少女を描いたものだ。なかなか油彩画も綺麗だなと思いながら観察していたのだが、ふと気が付いた。少女の目がそっぽを向いているのだ。
はて、この絵は実際に少女を立たせて描いたものだったと思ったのだが、だとすると何故視線を逸らしているのだろう？ そう思いながら鑑賞していると、少女がこちらを向いてきた。ただ、斜め横を向いていた少女の顔で、見えなかった部分が見えてきて怖くなった。
片目がほとんど見えていなかった状態から見えるようになったとき、その少女の見えなかった方の目のまわりが紫色の痣になっているのに気づいてしまった。
『まるで殴られた後みたいだなあ……』と気味の悪い想像をする。動いた瞬間は全く見えなかったのだが、顔は確かに動いていた。更に見ているとじんわりと少女の腕にやけどの跡のようなものが浮かび上がってきたので大急ぎで美術館を出た。
同様のものを見た人は居ないらしいが、モデルになったであろう少女がどんな生き様だったか考えるとあまりいい気はしないそうだ。