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SS:ヒッチハイクの男

 Rさんはその日、ようやくローンが完済したお気に入りのスポーツカーでドライブをしていた。未婚の彼には悠々自適のあてのないドライブだ。
 翌日が休みだったので、小旅行の気分で運転していると、ヒッチハイクをしている男が道の脇に立っていた。当然ながらせっかくローンを完済したばかりの車にあまり清潔では亡い人を乗せる気にはならず、無視して通り過ぎた。
 マナーが良いとは言えないが、その日は道の駅で一晩泊まろうかと思っていると、そこに着く少し前にまたヒッチハイクをしている男が立っていった。その男が先ほど道の脇に立っていた男と同じ男のように見えた。
 自動車で数十分走ったと言うのにヒッチハイクで追いつけるのか? そう考えるとなんだか怖くなり、泊まることなく車を走らせ続けた。
 しばし走ったのだが、車を止められるスペースがある度にあの男が立っていた。結局諦めて自宅への道へ引き返した。それなりの距離があったので集中力が切れそうになりながら、なんとか自宅近くまでついた。そこで気が緩んだかと思うと、ヘッドライトの光の中にあの男が道の真ん中に立っていた急ブレーキをかけてなんとか男の手前で止まった。
 そのときにハンドルの方へつんのめってから顔を上げるとそこには誰も居なかった。あの男はいなくなっていたが、彼はせっかくローンを完済したというのに自動車を運転するのが怖くなり、車を持っている必要があるか悩んでいるそうだ。

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