Kさんはある日筋肉痛で目が覚めた。ハードな運動をした後のように体中が痛い。何故こんな事になっているのか分からないが、とにかくその日は湿布を貼って出勤した。
その日から週に三日は筋肉痛に悩ませられることになった。毎回寝覚めがこれではたまったものではない。
そこで渋々有休を使って病院で検査をしたのだが、どこにも異常は無いと言われてしまい、年のせいでしょうと冷酷な現実を突きつけられた。
どうしてだろうと不思議に思っていたところ、ピコン、と手元の方で音がした。よく見るとスマートウォッチのフィットネス測定機能が今日の目標を達成したことを告げていた。
となると自分で起きていることになる。自分で何か運動をしているのだろうか? そう思って頭にアクションカメラをつけて、それにモバイルバッテリーを繋ぎ一晩寝ることにした。流石に寝づらかったものの、連日の疲れから意識が落ちた。
翌日、体の節々が痛いので目が覚めたのだが、早速カメラに挿していたSDカードを取り出してPCで読み込んでみた。
動画ファイルがしっかり記録されていたのでそれを開くとピクリともしない天井がうつっていた、それを早送りして画が動くところまで動かすと、立ち上がってしっかりした足取りで玄関を開け、鍵を閉めて走り出した。
自分で記憶が無いのにこんな事が出来るのかと思いながら見ていると、神社に着いた。そこで鐘を鳴らして手元からパンと音がした、多分手を合わせているのだろう。
それから家に帰って寝ていたので、こんな事があってはかなわないと、その神社に行って千円札を一枚賽銭箱に入れ、もう勘弁してくださいとしっかりとお願いをした。
その後しばらくは悩みが消えたのだが、ピッタリ一月後にまた同じ事になったので今は毎月千円を神社に入れているそうだ。
「ジムの課金を強制されているようなもんです」うんざりした顔で彼はそう言った。