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SS:お盆の小遣い

 お盆にOさんは田舎に帰った、実家の墓参りのためだ。
 老齢の両親しか居なかったために、墓の手入れも任されたのだが、田舎の墓を知っている人なら想像がつくであろう、見事に草が鬱蒼と茂ってしまっていた。
 時間に余裕があれば事前に除草剤を撒いて、枯れたものを刈っていくのだが、生憎そんな時間は無い。それを見越して実家から燃料用のエンジンオイルを混ぜているガソリンと草刈り機を持ってきていた。
 ザクザクと刈ると青臭い匂いが漂ってくる。緑の植物を潰したとき特有の匂いが鼻についた。
 汗をかきながら一通り草を刈ったところで、後は残りの石を傷つけないように避けていた際に生えている草を手で刈ってなんとか綺麗な墓に戻った。
 墓じまいという言葉も正直浮かんだという。しかしそれは両親が反対するだろうと思い口には出さなかった。
 そうして墓地を綺麗にして墓に水をかける。それからお供えを置いていったt。
 線香を全部に供えてからお供えのお菓子を一つ一つ墓石に供えていった。そこまでは普通の墓参りだった。ただ、彼の祖父母の眠っている墓に供えようとして気が付いた。墓石の前に五百円玉が置いてあった。それは最近切り替わった最新のものではなく、それどころかその前に普及した金色がかったものですらない。かなり昔に切り替わって見なくなった銀色をした五百円玉だった。
 そこで思いだしたのだが、まだOさんが子供の頃、幼稚園か小学校の低学年の頃だ。両親にはあまりお小遣いをもらえなかったのだが、祖父母はそんな様子を見てこっそり五百円玉を渡してくれた。それを使って友達と遊んでいた。
 もういい年のOさんは今更五百円に困ったりはしない。ただ、爺さんと婆さんにとっては未だに自分が小さな孫扱いなんだなと苦笑してから五百円玉をポケットに入れてお供えを置いて帰った。
「年を取っても変わらないんですねえ……」
 彼は懐かしい思い出を語ってくれた。なお、その五百円玉はお守り代わりに財布の小銭入れに入れているが、使う気は全く無いらしい。

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