Bさんはある夏の日、田舎の川で遊んでいた。まだいろいろとうるさくない頃の話だ。今なら子供だけで川に入って遊ぶなどと言おうものならいろいろ言われそうだが、昔は日常だった。
その日、友人と川で魚を捕まえていた。大物がいたのでそれを捕まえようとなるのは自然だ。当時は誰も大きな水槽など持ち歩いていないので、捕まえてしまったらその魚は死ぬのが確定だったが、当時はそこまで考えていない。
一見鯉のように見えたその大きな魚を捕獲しようとみんなで網を振って狭い場所に追い込んだ。ここなら逃げ場はないだろうと思い、皆が捕まえられると確信していた。
ただ、そのとき捕まえようとしたのだが、その魚は誰もが入れるとは思っていなかった狭い岩の隙間に風船のように縮んでシュッと入った。
全員が絶句して魚が消えていった岩の間を見ていたのだが、そこから何かに食べられたであろう小さな魚の頭が流れ出てきたのでパニックになって全員逃げた。
結局、あの謎の魚がどうやったのかは分からないのだが、捕まえなかったことを心底良かったと思っているそうだ。