Hさんは大学への進学と共に教習所に通って夏休みに運転免許を取った。
免許を持っていない人もそれなりに居たので、友人から宿泊代は持つから運転手の一人をしてくれないかと旅行に誘われた。
学生特有の貧乏旅行だったが、教習所に結構な金額を払った身には娯楽敵なものをいくつか諦めてしまったので十分魅力的に思えた。
そこで親から車を買ってもらったという友人の友人の家まで行くと、結構な大きさのミニバンが初心者マークを付けて停まっていた。こんなもの学生が持つ車じゃないだろうというツッコミを胃の腑に飲み込んで集合した。
そしてその車の所有者は車を出すのだから運転はできるやつに任せると言っていた。その中で免許を持っていたのは友人だけだったので、わざわざ自分を誘った理由が分かる。
運転に自信があったわけではないが、立派な車を自分で買おうと思えばまだまだ先になる。こんな体験をするのも悪くない。
そう自分を納得させてクルマに乗り込んだ。
自分と友人たち意外にも女子を呼んでおり、運転の二人は前の運転席と助手席に固められ、後ろは軽くハーレム状態だったため、そりゃ俺みたいなのでも誘うわなと納得してしまった。
行きは順調に進んでいった。割としっかりした旅館に着くと、ミニバンを買ってもらっただけあり、大部屋を借りており女子たちを全員引き連れて同室に入っていった。
「なんか悪いな……」
友人には気にするなと言って宿で遊びほうけた。それがマズかったことに気が付いたのは帰るときだ。せっかく温泉つきの旅館に泊まったというのに疲れが全く取れていなかった。
しかし運転を引き受けた以上運転席に座ってエンジンをかけた。そのまま帰途についたが途中でバックミラーを見たときに意識が固まった。
女がいる、いや、そのボンボン以外は全員女なのだが、一人リアガラスと座席の隙間に顔の青白い女が顔だけでこちらを見ていた。
思わずハンドル操作を誤りそうになりながらもなんとか無事帰ることはできた。しかしそのボンボンは旅行の後、数週間高熱にうなされることになり留年が決まってしまった。
真相は確かめようが無いが、あの車は事故車では無いかとほぼ確信していると言う。