• 異世界ファンタジー
  • ホラー

SS:お盆に帰ってくるために

 お盆には先祖が帰ってくるのにキュウリの馬を作って早く来てもらい、帰りはナスの牛でのんびり帰ってもらうように作る習慣があり、Bさんの実家でも同じ風習があった。
 そこで彼は言われたとおり馬を作って仏壇に供えていた。牛の方も両親が作って供えるのでナスを買ってくると言っていた。
 夏休みということで、小学生のBさんは遊びを楽しんでいた。たまたま父方の実家に行ったときに、気前よく小遣いをもらったのでそれでプラモデルを買っていた。それをパチパチ組みながら、この部屋にもエアコンが欲しいなあなどと思っていた。
 自室があるだけ贅沢なのかもしれないが、やはり両親の寝室に置いてあるエアコンが羨ましかった。
 現在であればエアコン無しなど考えられないが、当時はまだエアコンが全室につけられるような廉価なものではなかったし、エアコン無しでもなんとか耐えられる気温だったので必要無いと言われてしまっていた。
 そうしてその晩、夕食を食べ、風呂に入ってから布団に倒れ込んで眠ろうとしたときのことだ。なにか『ゴオオ』という音が聞こえてくる。両親どちらかの部屋のエアコンの音だろうと思っていた。涼しく眠れるのは羨ましいと思っていたが愚痴っても仕方ない。
 そうしているうちに意識が落ちて目が覚めたときには部屋がもう明るかった。そんな時、母親に呼ばれた。
「あんた、仏壇になに供えてるの!」
 そう言われ仏壇を見ると、昨日作った戦闘機のプラモが仏壇に置いてあった。もちろん自分は供えていないのだが、それを言っても信じてもらえないだろうと思い諦めた。
 それからしばらくして、曾祖父が旧日本軍で戦闘機のパイロットをしていたのだと知った。そのとき彼は『なにも最新の戦闘機で帰ってくるほど急がなくても良いじゃないですか』と愚痴っていた。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する