Pさんは少年時代、川で水切りをして遊んでいた。友人たちは携帯ゲーム機を持っている子が多く、当時はまだモノクロ液晶だったがそれでも羨ましかった。
買ってもらえない恨みも込めて石を川に向けて放り投げる、ちゃぱ、ちゃぱ、ちゃぱ、ぽちゃんと数回跳ねて川の中へ消えた。そのとき『ぎゃっ!』と言う声が響いた。
誰かに当たったかと怖々川の方を見るが、血のようなものは見えない。そもそもこの川は浅めなので誰かが隠れるような場所なんて無いはずだ。
そう思って次の石を投げようと、ポイントを見定めていると、川は藻で緑色になっていたのだが、その中に藻ではないだろう暗く青い水が漂う場所が合った。丁度石が落ちて叫び声が聞こえたあたりだったのでゾクリとして帰宅した。
後日、親が教育のためにと買っていた図鑑で虫の中には血が鉄ではなくどうで酸素を運んでいるので青く見える体液で満たされたものが多いと知った。
ただ、あの青い部分はかなり広かったのでどう考えても昆虫とは思えないそうだ。結局、今に至るまであの声と水の正体は分からない。