Lさんは高校の時、奇妙な体験をしたそうだ。
三年制の冬、受験を済ませてもう後は合否の発表を待つのみとなった。
Lさんの家は母子家庭で奨学金を使用する予定だった。
母親はいつも通り仕事に行っており、自分は発表のページを何回もリロードしていた。
当時はネットでも発表される時代だったが、それほど太い回線が敷設されておらず、発表時間の付近でネットワークが重くなっていた。
そんな時、スマホが鳴った。こんな時に……と思いつつ電話に出ると『サクラサク』という男の声がしてプツンと切れた。
いや、縁起の良い言葉だけど、こんな時に? と思いながら時計を見ると発表時間を五分ばかり回っていた。
PCでリロードすると番号がずらっと並び、その中に自分の番号があり、母親に早速その連絡をしたのだった。
なお、謎の電話の時は気が付かなかったのだが、その声は亡くなった父にそっくりだったと彼女は語った。
電話はそれ一回きりで、内定の発表では父親の電話は無かったらしい。彼女曰く『そっちの方が厳しいんだから空気読んでそっちを事前に教えて欲しかった』だそうだ。