近年、ゲームと言えばソシャゲという人も多い。家庭用ゲーム機で育った身としては悲しさも持つが、時としてソシャゲは怪現象を引き起こすらしい。その事をTさんに聞いた。
「ソーシャルゲームの全てが悪いとは言わないんですが、運営がまともに機能していないと突然破綻したりするんです」
そう言う彼は美少女のカードを集めるソシャゲをプレイしていたそうだ。
「熱中する気持ちは分かるんです。ただ、コンシューマではあり得ない被害がネットに繋がっているせいで起きるんですよ」
何があったのか、彼は今ではソシャゲから足を洗ったらしい。それは苦々しい体験によるものだそうだ。
「ソシャゲ運営には少々アレな運営が混じっていることは知ってますよね?」
そう聞かれたので私は迷わず頷く。
「それは確かにありますね。いくつかサービス終了までプレイしたゲームもありますが、大抵最後の方は酷いものです」
綺麗に終わらせられるソシャゲの方が少ない、それは分かっているが納得いくかどうかはまた別だ。
「ストーリーが酷い程度なら全然許せるんですが……運営がサ終を決めると露骨に運用費を切り詰めるんです。だからどうしてもトラブルは起きるんですよ」
ありがちな話だ。サ終してしまうと課金要素を停止するものが多い。そうなるとただ金がかかるだけなので、サーバー代や保守人員を削ったりする。
しかし、彼が言うところにはそんな簡単な問題ではないらしい。
「どのソシャゲとは言いませんが、サーバー代をケチってスケールダウンしたのか、運営を減らして管理が雑だったせいなのかは分かりません。ただ、一回だけいつも通りにゲームを始めたら自分とは別のユーザーでログインしていたんです」
それだけならソシャゲ運営の怠慢だが、問題はそういうことでは無いらしい。
その時持っていないキャラが手持ちにいたんですよ。よく見ると課金石やゲーム内通貨もおかしな数字になっていたんです。何か不具合でも出したかなと思いお知らせ欄を見たんです。でもそこには何も不具合の報告は無かったんです。
初めは乗っ取りかと思ってユーザー情報を見てみたんです。そうしたら『○○』というユーザ名になっていまして、心当たりのない名前だったんです。しかも本名っぽい名前だったんですよね。その時は、ああ、運営もやらかしたなと思っただけだったんです。
そっとゲームを終了して、緊急メンテが入るのを待ったそうだ。案の定数十分後に問題を認識した運営が緊急メンテに入り、そのメンテでユーザがこんがらがった件はロールバックと詫び石で終了した。そこまでならば雑な運営がやらかしただけなのだったんですが……なんとなく被ったユーザー名を覚えてたんですよ。本名っぽい名前で登録したんだなと、あまり詳しくない人なのかと思い、珍しくって記憶に残ったんです。
それだけならばよかった、そう言ってから孫呉の話をし始めた。
「問題はその後しばらくしてからです。とある事件が起きたんですよ。何の事件化は伏せておきますが、報道で犯人の名前を知ったのですが、『○○』でした。フルネームで間違いなく一致していたんです。ただの同姓同名にしてはあまり見かけない名字だったのでどうしても覚えてしまっていたんです。一文字も違わない名前だったんです。だから、もしかしたら自分は大事件の犯人のアカウントにログインしてしまったのかと思うと怖くなるんですよ。せめてもの救いは犯人が絶対に刑務所から出てくることは薙いだ牢固とですね。それだけがせめてもの救いです」
そう言って彼は話を終了した。結局真相が分かったわけではないのだが、その事件以来彼はソシャゲが怖くなったらしい。