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SS:一晩寝かせたアプリ

 同人ゲームを作っているWさんは悩んでいた。一通り素材はそろったのだが、謎のエラーが出てアプリに出来ないのだ。時々起動したりしなかったりする一番面倒なバグと向き合っている。

 いい加減にしてくれと思いながら、一つ一つ警告を潰していった。八割方警告を潰したのだが、まだまだ突然平気で落ちるアプリになってしまった。趣味で作っているので納期があるわけではないのだが、やはりトレンドというものもあるし、出来ればデザインが古くさくなる前にリリースしたかった。

 ゲームエンジンを使おうとしていたところでライセンスの価格が変わったせいで気軽に使えなくなった、そのせいでイライラしていたのもあるのだろう、嫌気がさして寝てしまった。布団を被って寝ている間、なんだかカタカタという音が響いていたのだが、それを気にすることもなかった。別にどうでもいい話だ。

 翌日、彼が目を覚まし、大学に行く前にPCで一通りのチェックをすると、何故かゲームが完成していた。アレだけ落ちていたものが、実機でテストしても全く落ちない。納得はしなかったものの、夜のうちに誰かが完成させたとしか思えなかった。

 なんとなく幽霊の仕業のような気がしたが、悪いことどころか助けてくれたので文句を言うつもりは彼にはなかった。

 ただ、後日、そのアパートで幽霊が出ると噂が立ち、大家がお祓いをすることになった。被害が出ているわけでもないんだからやめて欲しいと思ったものの、お祓いは無事執り行われ、それ以降彼のところで霊現象が起きることはなくなった。

 彼曰く『やはり自分でなんとかするしかないんでしょうね』と言っていた。都合が良い幽霊が出たのはその一回だけだそうだ。

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