Y田さんの実家には柿の木があるらしい。実家では、その柿の木には良いことがあるときには黄色い柿が、悪いことがあるときは青い柿がなるらしい。
彼女はそんなことは全く信じていなかったのだが、信じてしまう出来事があったらしい。
それは高校受験の合格発表前日のことだ。自信の無かった彼女はぼんやりと庭を眺めていたそうだ。すると何か黄色いものが目に入る。よく見るとそれは柿の木になっているようだった。急いで靴を履き柿の木に近寄るとその実はすっかり無くなっていた。
しかし翌日、難しいと言われていた高校に合格し、無事進学出来た。大学受験のときも同じようなことがあり合格を柿の木が予知したそうだ。
これだけなら良いことだと思われる。しかし彼女は一度だけ青い実がなったのを見たことがあるそうだ。一瞬だけ柿の木に青い部分が見えたのだが、再び見たときにはもう見えなくなっていた。
一週間後、親族の一人が大病を患うことになったと連絡が入った。
「もうじき就活の結果が出るんですが、嫌と言うほど青い実を見たんですよね、それを見ると必ず不採用通知が来るんです。だからいい加減柿の木を切り倒して欲しいって思うんですよ」
彼女は最後に『都合の良いことだけ教えてくれれば良いんですがね』と言った。