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SS:川底に沈む白いもの

 Aさんの近所の川には事故がよく起きる地点がある。その川全体で事故が起きるのではなく、その場所に集中して事故が起きているのだ。

「中学生になった頃にそこに一人で肝試しに行ったんです。どうしてそこだけで事故が起きるのか不思議でならなかったので、何か分かるかなと少しだけ期待をしていました」

 少しの興味と不安を覚えながら、退屈をなんとかしたいと思っていた彼は夜にこっそりと家を抜け出して川に向かった。昼間にその辺にいると大抵音に見つかって怒鳴られるからだ。そのくらいその場所は嫌われている。

 嫌われているなら何故そこに行って事故が起きるのか不思議だったので興味がかき立てられた。

 夜、長靴と懐中電灯を持って家を出たのだが、なんとなく不吉な感じがした。しかし不吉に感じるということは何かがあるのだろうと好奇心を刺激した。
 そうして少し歩くと川原にたどり着いたので、裸足になって水へ入る、半ズボンの濡れない範囲までしか入るつもりはない。

 その場所に着いたのだが、驚いた事にその場所は膝より下までしか水が無かった。では何故事故が起きるのだろう? 不思議に思って懐中電灯をつけた。目立つので出来れば使いたくはなかったが、何かあると思うと使わざるを得なかった。

 それで川の底を照らすと、こけの付いた石の他に、何か白いものがあった。それを拾い上げて観察してみる。それは軽く、ボロボロだったがどこかで見た記憶があった。

「ひゃっ!?」

 思わずそれを投げてしまった。どこで見たのか思いだしたのだ、アレは斎場で見た骨にそっくりだった。もちろん人間のものではないと思う、というか思いたかった。

 そちらを照らすと白い塊は浮かんだまま流れていった。何故水に浮くようなものが沈んでいたのかは分からないが、一刻も早くその場を去りたかった。

 それだけの話だ。それ以降その場所で事故は起きなくなった。ただしその川はそこそこ長く、隣の市と繋がっているが、今のところ数回下流で事故が起きているそうだ。それがあの流れていった骨と関係があるのかは考えたくもないらしい。

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