高見さんはボランティアで町のあちこちの清掃をしている。そうなると必然的にゴミを扱う機会も多いわけだが、中には捨ててはいけないゴミや、どうやって手に入れたのか分からないゴミもあるらしい。そんな中、怪異のようなゴミに出会ったことがあるのでそれを話していただいた。
「ボランティアなんてけったいな言い方をしますがやってることはただの掃除ですよ。みんなの住んでいる町は綺麗な方が住みやすいってだけの理由でやってるだけだよ」
そうは言うものの、いろいろな人から感謝をされているらしい。
「でも、あのゴミだけは拾えなかったなあ……」
それがどんなゴミだったのか教えてもらえますか?
「あんたって若いんだっけ? 俺の若い頃にゃゴミ袋は真っ黒で適当に詰め込んで出しても回収してくれてたんだよ。おおらかな時代だったねありゃ。しかしそんな時代にもわざわざ道ばたにゴミを捨てていくやつがいるんだからかなわんよ。その辺で売ってるゴミ袋に突っ込んでゴミ置き場に放り投げるだけで回収してくれるんだぜ? しかも袋なんて普通のビニール袋で今みたいな値段じゃないのに、だ。イライラしていたんだがな、それが高じてそう言うものをきちんと捨てるようになったのさ」
そういう時代もあったそうですね。
「ああ、今じゃ環境がどうたらとうるさいがね、あの頃はそんなこと言ってるやつはいなかったよ。で、俺も道ばたに投げ捨てられたゴミをきちんと出していたんだ。集めてゴミ袋に入れて収集所に出すだけだがな。でもなあ……あの時は何故かゴミ袋が丁寧に縛られていたんだ。ああ、もちろん真っ黒な袋だよ、中なんて見えやしない。しかしここまで丁寧にしているなら後はゴミ捨て場に出すだけだろ? どんだけ横着なんだと思いながらソイツを手に取ったのさ。そしたらその袋なんだが結構な重さがあってな。片手じゃ無理だと思って両手で抱きかかえたんだよ……そしたらさ、そのゴミ袋から暖かさが伝わってくるんだよ。ゴミだぜ? 火種が入っているなら当に火事になっているだろうし、モテないほどの暖かさじゃないんだよ。で、嫌な予感がしたんだな。ほら、ちょうど生き物の体温くらいの暖かさだったからさ、万一って事もあるだろ?」
それで、袋の中身は一体……
「新聞紙……今の若いのは新聞撮ってないのも多いらしいが……それにくるまれた位牌がミッチリ詰まってたんだよ。位牌だぜ? 温かいわけが無いんだよ。一応中を改めたけど火種みたいなものは無かったな。本当に何で温かかったのか分からんよ。その位牌は全部寺に持って行ったんだがな、その日帰りに買った宝くじが当たってさ、今じゃ余裕のある生活が出来るからこんなボランティアなんてやる暇があるんだよ。いまでもあの仏さんが宝くじを当ててくれたんじゃないかって俺は思うね」
そう言って不敵に笑う高見さんだった。