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SS:親友だった子

仁村さんは少し前に親友を亡くしている、その時の体験が未だに恐ろしいそうだ。
「親友のことを悪く言いたくはないんですけど……アレは気味が悪かったですね」
どうやら親友の死に何か関係のある恐怖体験をしたらしい。
「一体何があったんですか? ご友人を亡くされたことは気の毒だと思いますが……」
「いえ、親友ではありましたが、今は違うと思っていますよ。普通に生きていた頃はいい人だったんですけどねえ」
どうやらよほど嫌なことがあったらしい。
「何かあったんですか? あまり良いことがあったわけではなさそうですが……」
「ええまあ……あまり死んじゃった人を悪く言いたくはないんですけど、あんな目に遭うとね」
そうしてポツポツと話してくれた。
「親友はいきなり病気になったんです。何回も面会には行きましたがそのたびに弱っていく姿を見るのは心が痛みました」
「それでも面会は続けたんですか?」
「ええ、あの子は家族との関係も悪くて私が一番面会したんじゃないかな? そのくらいには会いに行ってました」
それでも親友は病が重く、徐々に生きることをやめていき、ついに亡くなってしまったそうだ。
「そこまでなら気の毒な話で済むんですが……あの子の葬儀に参列した日に夢を見たんです」
「夢ですか……気にしすぎなのでは?」
「私もそう思ったんですがね、あの夢の中の顔は忘れられません。穏やかだったあの子の顔は夜叉のように歪んで私に『何で私が死んであんたが生きてるのよ! 一緒に死んでよ!』と追いかけてくるんです。それが四十九日まで続きました。あんな子ではないと思っていたんですけどね……」
そうして彼女はもう夢に現れていないそうだが、どうしてもあの顔が忘れられずお墓参りをする勇気が出ないそうだ。

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