『ほうかご探偵奇譚録』は、実験的ミステリ習作という位置づけでこの世に生を受けました。
結論から言うと、人物・風景描写を極力排除し、謎解きに関わる要素の描写に注力するという手法をとっています。実験結果のほうは各々の判断に委ねますが、僕はまだ満足していません。連作短編という形式をとった以上、ひとつの事件に注力して描くことは難しいと思いました。数々の事件の裏で本筋を貫き通しているミステリ作家の先輩方はやはり偉大なのだなあと感じる限りです。精進します。
小日向倫也にまつわる話は一旦終わり、周吾郎や春瑚は湊川高校の学園探偵部の一員として新たに高校生活をスタートさせました。高校三年間という長いようで短く、しかし濃度の高い時間のなかで、彼らは様々な事件に遭遇するのだと思います。未知数ではありますが、可能な限り、これからも周吾郎と春瑚の高校生活についてつらつらと描いていければ――というのが理想です。
第1作という扱いになる今作は『ほうかご探偵奇譚録』という名前を授かりましたが、第2作以降はそれぞれ別のタイトルになっていくかもしれません。そこはまだまだこれから。周吾郎と春瑚のやりたいことを突き詰めていれば、自然と相応しい表題が生まれるだろうと信じています。
それでは、ここまでお読みくださったみなさまに、最大限の感謝と賞賛を送りつつ、仕舞いとさせていただきます。それでは、また……
この世に謎がある限り。
彼らはまだ、推理に生きているはずだ。