揺れる車内は地方ならではか。
国交相から財務省が道路財源を取り上げるからこんな凸凹としているのだ。
そんな話を聞いたことがある。
車社会の地方都市では、ガソリンだって割高だ。賃金も低いのにキツイだろう。
投資は大都市に集中させて快適さをこれでもかと高めていて、そりゃ若者を大学なんて行かしてしまったら、帰ってなんてこねーよな。
なんて思いながら街灯のない道を、マーケッター君の車がひたすらに進んでいた。
どうしてこうなったし。
◆
懇親会。
宴もたけなわだったか、泥縄だったか。
そこそこに酔い、そこそこにお腹も満たされ、あとはシャワー浴びて寝よかーっていい感じになったおじさんズ。
宿に戻ってからの就寝最短ルートを脳内準備していたら、マーケッター君が何やらスマホを見せてくる。
エッチなのはいけないと思います。
そう思って見たらお馴染みのマップアプリだった。
なぜ?
「? 何これ? 山の…中を通って…?」
何やら嫌な予感がする。
「温泉行きましょ! 良いとこ教えてもらったっす!」
嘘でしょ。
さっきオーナーさんと話してたのはこれだったのか。
でもね? もう二徹になるんだよ? 君知ってるよね? この上更に温泉とな?
馬鹿言っちゃあいけないよ。
のぼせたら僕昇天しちゃうよ。
ビバノンノしちゃうよ。
それはいいのか。
「刀さんも、9.8さんも行きたいって! 墨色さんももちろん行くっしょ!」
チラリとその二人を見ると苦笑いしていた。
行きたいとは言ってなさそうだが?
二人が否定しないところをみると、いつの間にか懐に潜り込んだのか…コミュ力お化けめ。
断りにくいじゃないか…。
他のメンバーは全員酒を飲んでいて、マーケッター君の車は四人乗り。
僕が居ないとおかしいのはわかるけどさぁ。
彼のテンションに引き摺られたのか、会場の空気か、初日の高揚か、それともやっぱり感覚が馬鹿になってるのか、正直まだ眠くはない。
時間的にもまだ早い。
夜はこれからだと彼が思っても仕方ない。
ただおしっこは見た事ないくらいのエマージェンシーな色だった。
パターンオレンジ、対象不明です!
違う違う。
いや違わないか。
眠気が行方不明すぎる。
そして何より最悪なのが、僕、温泉スキーなんだよね。
くそっ!
考えないようにしてたのに!
こいつなんで飲んでないんだよ!
酒好きだっただろ!
ギャルママ帰したのは失敗だったか…
そうして、僕らは温泉に向かった。