懇親会は会場ビルの上の階で行われた。
めちゃくちゃオシャレな空間だ。
高い天井にデカいソファにデカいテーブル。
ロフトにオシャレ洋書の数々が並んでいた。
ここで、オーナーさんや地元の方、同じような作家さんとの交流会をしようと言ってくれていて、地元の野菜を使ったイタリアンを持って来てくれるのだと言う。
そしてワインにシャンパン、ビールなど。
久しぶりのお酒の匂いにくらくらしてくる。
これ、入れていいものかとプツプツと湧き上がる泡を眺めながら自問自答していたら乾杯と言われてつい飲んでしまった。
五臓六腑に染み渡…らない。
…あ、これ酔えないやつだ。
何となくの感覚でしかないけど、いける日と同じ感じだ。
つまり反動の振り幅がデカいやつだ。
昔活動限界に達した時は何やらかしたっけか。
謝り倒した気がするけど、覚えてないな。
ま、いっか!
そうして僕はお祭りに参加しようとした。
しかし、やはり僕の見た感じがヤバいらしく、他のメンバーが止めてくる。
彼らとはもう10年以上の付き合いだ。
でもすぐ寝れるくらいの距離に宿ってんだけど…いや、ここは大人しく聞こう。
僕も久しぶり過ぎて飲む量がわからない。
流石に無茶飲みさせる人はいないし、酒好きなマーケッター君も空気を読むだろうし、彼のターゲットになりそうな女子はいない。
敢えて言うならどちらも僕だけど、すでに人身御供は用意していた。
元バンドマンの作家で、切れ味鋭いツッコミをしてくれる男だ。彼を「刀」君と仮称しておこうか。おそらくマーケッター君はスパッと袖にされるだろう。刀君のすごいところは的確すぎて切られてるにも関わらず彼のファンになってしまうところだ。
その彼とは別に、新しいメンバーも一人増えていた。仮称「9.8」さんと呼ぼうか。何やら糖尿病数値がそんなギリギリの値らしく、いくらを超えたらどうなるか僕にはわからないけど、ぐいぐい飲んでいた。
9.8さんはたまたま出会って僕が口説き落として参加してもらった。他のメンバーとはすでに打ち解けているようだし、出来れば来年も参加してほしい。
「死んでなければ」
「またまた〜」
なんて言いながら、イタリアンが運ばれてくる。
ようやくのご飯に、胃がびっくり…しない。
そこまで入らないのがわかる。
そういえば、お酒入れるとご飯入らなかったっけと思い出す。
今日はなんだかゴテゴテだな。
いつもか。
ま、いっか!
後は寝るだけだしな!
多分寝よう!としたら寝れない感じだし、飲んで食べてお話しようじゃないか!
オーナーさんや他のメンバーと話しながら、今日の事とか、明日のこととか、地元のことなど気づかされる話ばかりで面白かった。
そうして夜は楽しく更けていった。
マーケッター君が、一つもお酒を飲んでいない事に、少しも気づかずに、更けていった。