ギャル風ちゃんはママで40だった。全然関係ないけど、ラムネ&40を思い出した。ドキドキスペースのハラハラワールドだ。
「そうは全然見えないよ」
「そ、そうですか? そんなことないですよ、ふふ」
「…」
あかん、ニコニコと照れた+ギャル風+落ち着き+ママやとくっそ可愛いやんけ。
生と死の境目の今の僕にめっちゃ効くやんけ。
すると今度はマーケッター君が黒髪ちゃんを指さした。
「で、彼女、なんと17歳ですって! どうします!?」
どうもしますもないんだよ。
君が17歳をdoしたらダメなんだよ。お縄なんだよ。何言ってんだ。
檻の中だなんて小説の中だけでいい……ん? 君まさか保護者同伴だから良いとか思ってないか? なら余計ママからだろうが。
というか親子って知ったのなら諦めようよ。
というかいつも君偽名じゃん。どうすんのよ。
でもちょうどいいからいろいろ聞いてみた。
なんと黒髪ちゃん、初めて付き合ったのは小5なのだとか。
しかも幼稚園からの幼馴染にお手紙で告白して付き合ったのだとか。
キュン。
いやキュンじゃなくて。
ポ。
いやポでもなくて。
馬鹿な…幼馴染とだと? 僕なんか明らか両思いだったのに引っ越しで離れ離れになって数年ぶりに会ったら彼氏同伴だったんだぞ? 事前連絡なしだぞ? リアルBSSだぞ?
くそっ、絶対創作の中だけだと思っていたのに…
気になってしまうじゃないか。
いろいろ聞いてみると、幸せな日々は唐突に終わり、中学一年の冬に振られたのだとか。
その時は大泣きしたらしく、お母さんも慰めてあげたそうな。
以来、お母さんとはお互い恋愛相談をし合っていて、お出かけなんかは一緒に行き、たまに行く温泉なんかでもお友達と思われるみたいだ。
ママスタイル凄すぎだろ。
「へーそうなん、だ…?」
……ん? お互いとな?
……。
俄然ギャル風ママの話を聞きたくなってしまったんだが、聞いていいものなのだろうか。
人妻とシングルマザーでは随分と違う。
いや、娘さんのこの感じはシングルだろうけど。
あくまで創作の糧に根掘り葉掘り…いかんいかん。行き過ぎたお節介ではなく、つまりイントロだけでも聞きたいんだが?
すると黒髪子ちゃんが言った。
「あの、目、大丈夫ですか? 真っ赤ですよ?」
「あ、うん、あんまり寝てなくて…はは」
僕の邪が見抜かれただと?
くそっ、いいコンビ、いやさ親子じゃないか…と思ったら黒髪ちゃん、何故か僕にはぐいぐい話しかけてくれるんだが。彼氏今はいないらしいんだが。
ああ、あれだ。
たまにある。
というか結構あった。
チャラいやつから逃げるための人柱、それが僕だ。
何故か昔から多いんだよね。
僕、今は目がバキバキだけどギラギラしてないからか、連れの好きな子が僕に仲良くしてくることが多かった。
流石にこの年になってはないけど、男にナンパされたこと何回かあるし。関係ないか。ドキドキハラハラだったな。
人畜無害感とでも言えばいいのか。
つまりマーケッター君の邪悪さを肌感覚で感じ取ったのか。
いや見たまんまか。
絶対マーケッター君のヘイト貯めるやつだこれ。
女子こえぇと思いつつ、それからも黒髪ちゃんと話していた。めちゃくちゃ笑ってくれるじゃん。いい子じゃん。
時折り聞こえてくるママとマーケッターの話では旦那さんと別れていて、そしてどうやら小5の息子までいるのだとか。
黒髪ちゃんの弟君だ。
それはいけない。もしかしたらお腹を空かしてるかもしれない。
だから早く返そうと車のとこまで向かった。
ピンクの可愛らしい軽自動車だった。
ルパンみたいな名前だった気がする。
そしてドアを開けた途端、シートが「苺泥棒」という有名な柄だった。
どうやらママのお手製だそうだ。
馬鹿な…ギャルママがアート&クラフト運動だと?
─キュン。
僕もその柄好き。
その同好の氏を見つけ、ママに声をかけようとしたら、その喜びの声を遮るようにして「うわ、女の子の部屋の匂いだ!」なんて言いやがった。
いや、確かに良い匂いだけど、そこじゃねーよ。
刮目すべきはこのギャルママ×ウィリアムモリスのギャップカロリーの高さだろうが。
それに黒髪幼馴染がこの「苺泥棒」に座ることに何かしらの愛を感じたりはしないのか。
いや、僕の幼馴染ではなかった。
どうも頭が回らない。
危ない危ない。
その後もマーケッターは必死に夜遊ぶとこ連れていって欲しいだとか、明日も来て欲しいですだとか引き伸ばしにかかってる。
おそらくラインを聞き出すためだろうが、すげえな、ゆとり。
つーか誰だ若いやつは草食だなんて言ったヤツは! そのせいで何人の女子が泣く(意味深)ハメ(意味深)になったと思ってやがる!
僕らの青春時代には!
スマホとかないから!
そんなやつ居ても食い散らかせなかったんだぞ!
だいたいカリッツォな氷河な時代で!
ゆとりなんて全然なくて!
僕も何言ってるかわかんなくなったZ!
だからなんだかんだでママと娘にはお帰りいただいた。
最後まで手を振る黒髪ちゃんに、あの子を重ねてしまった。
運命か…。
「あー絶対いけたと思ったんですよね」なんて運命を軽くなかったことにしてるマーケッター君と話しながら会場に戻ると、懇親会まであと少しになっていた。
活動限界は未だ訪れておらず、40時間に届こうとしていた。