男友達といる時、そして初対面女子と遭遇した場合。
まあまあされることがある。
そう、無茶ぶりだ。
巻き込む呪文だ。
強引に女子に取り入ろうとした時、自分ではどうしようもない時、そしてこの場では相談出来ない時、たまにそんなカードをきってしまう。
わかる。
おじさんわかるよ。
でも、節穴か?
こんな疲れたおじさんに振るか普通。
「二人とも可愛いって、ね、墨色さん?」
ね、じゃねーよ。
いや確かに可愛らしいとは思うが、君が好きそうだねとは言ったが、言ってないよ。
ん? 彼の中ではイコール可愛いに…なるのか。
どうも頭が回らない。
相槌をしながらちょっと観察してみよう。
するとギャル風の子とマーケッター君は上手く会話しているが、黒髪ちゃんは黙ってニコニコしている。
ああ、はいはい。
このパターンね。あるある。
ギャル風ちゃん→マーケッター君→黒髪ちゃんみたいな2対1の場合にあるやつね。
絶対ギャル風ちゃん邪魔なんだろな。
だから僕を強引に壇上に上げたんだね?
それくらいはおじさんわかるよ。
けど、おじさん今この場で一番ヒットポイント少ないんだが?
MPも尽きかけてるんだが?
コーヒーバーサーカーなだけなんだが?
いや、彼にはここまで連れて来てもらった。
会場の設営もテキパキと整えてくれた。
仕方ない。一丁頑張ってみますか。
そう思った時、マーケッター君はギャル風の子に手のひらを差し出してこう言った。
「それで墨色さん、彼女幾つに見えます?」
「…」
それ、お前から振る?
女子に言われたら困るランキングまあまあ上位のセリフお前が言う?
それ振る?
馬鹿な…さっきの可愛いもそうだが、おじさん褒めとハラスメントの境目がわからないんだぞ? これがZの力…ゆとり…つまり余裕なのか。
いや、おじさん負けない。
「29でしょ」
咄嗟に出たのは、おそらく世のおじさん諸君が数々の戦闘シーンで導き出し、縋ってきた魔法の数字だった。
説明はしない。
ギャルの子は最初の印象からちょっと経って、見た目より随分と落ち着いていることからおそらく30代半ばだろうと修正していた。
つまり29だ。
時と場合と雰囲気次第では27も31もあり得るが、ここは29だ。
偶数はなんとなく無しだ。
彼女もその僕の逃げた数字に逆に落胆するかもしれないが構わない。
マーケッター君のためだ。
乗ろうじゃないか。
「でしょ! 見えないですって! 親子に!」
「…親っ…?」
いろいろマジかよ。
これ、もしかして法律ダメなやつじゃないか?
というか節穴は僕だった。