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知らない乙女ゲー、モブ転生者の更新についてと、新作の現代ファンタジーの先行配信。題名『ダンジョン初心者の天才兄妹が、ただモンスターに目を輝かせて無双する話』

 どうもあおぞらです。
 内容はタイトル通りです。
 『モブ転生者が世界一危険な森でレベリング……』は明日投稿を再開します。
 『知らない乙女ゲーに転生して……』は頑張って今週か来週中に投稿します。
 
 それではどうぞ。

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第1話 ダンジョン初心者の兄妹



 ———地球に『ダンジョン』と呼ばれる異界のゲートが現れて早100年。

 当初は未曾有の危機を引き起こし、数百万もの命を奪ったダンジョンも、『覚醒者』と呼ばれる超常的な力を持った人々の奮闘もあり……今ではすっかり日常の一部として受け入れていた。
 
 さて、そんな世界の一角———覚醒者大国の1つでもある日本にて。

「我が妹、|凛音《りんね》よ」
「何だい、おにぃ」
「遂にこの日が来たわけだが……感想をどうぞ」
「早くモンスター見たい」
「素晴らしい! 素晴らしいぞ我が妹よ!」
 
 俺こと|赤羽《あかばね》灰音《はいね》は、唯一の肉親である妹の赤羽凛音と共に、田舎からはるばる東京———覚醒者協会日本支部へとやって来ていた。
 そんな俺達の腰には、太陽の光を反射して鈍く光る魔鉄———ダンジョンで取れる、魔力によって精錬された特殊な金属———製のバスターソードを下げ、急所を護るように同じく魔鉄製の身軽な防具を着用している。

 これだけの情報があれば、俺達がこれから行く所など1つに限られる。


 そう———ダンジョンだ。
 

 小さな頃からテレビで、ラノベで、ダンジョン専用配信アプリ『ダンスト』で。
 様々なメディアを通して俺達兄妹が毎日画面越しに見ては、目を輝かせていた非現実的な世界へと足を踏み入れるのだ。
 これで胸が踊らない者はいるだろうか、いやいない。

「凛音、身嗜みはバッチリか?」
「もちろんだよ、おにぃ。髪も可愛く結んだし、汗で流れないお化粧も、いい匂いの香水もしてきた!」

 俺の問い掛けに、凛音がポニーテールを揺らしながらふわっと花が咲くような笑顔を浮かべる姿は、さながらこの世に迷い込んだ天使のようだ。

 何て俺の例えの通り、凛音は他者とは一線を画す美貌を誇っていた。
 それなりに顔が整っている俺ですら『本当に同じ遺伝子をお持ちで?』と疑いたくなるくらいのレベル。
 
 俺と同じ———今は金髪だが———黒曜石のような目を奪われる漆黒の髪と瞳。
 目鼻立ちのどれをとっても完璧と言わざるを得ない、神が利き手&本気で描いたかのように端正な顔立ち。
 身長は154センチながら、バランスの取れた抜群なプロポーションは、実際より身長を高く見せる。
 
 俺より1歳年下……今年16歳の高校1年生とはとても思えないね。
 まぁ胸はどう足掻いても巨乳とは言い難いけど。(それを言ったら殺される)
 でもお兄ちゃんはそれも個性だと思ってるからね。

 対する俺は、凛音と比べれば見劣りするものの……それなりに整った容姿に、170ちょいと日本人男性の平均程度の身長。
 それなりに筋肉はあるが……細マッチョとまでは呼べない程度しかない。
 そんな俺の1番のチャームポイントは———田舎者と舐められないように染めている(安直)金髪の髪と眉毛。
 
 凄いよね。
 髪染めるだけでちょっとメンタル強くなるんだもの。

 何て、お気に入りの金髪について考えていた俺だったが、

「おにぃ、おにぃ!」
「ん、あ、あぁごめん、ぼーっとしてたわ。それでどうしたよ?」

 身体を揺さぶる凛音によって現実へと思考が呼び戻され、首を傾げる。
 そんな俺に、凛音が『おにぃは何してきたの?』と訊いてきたので、渾身のドヤ顔を披露して口を開いた。

「髪染めてセットしてきた」
「髪ばっかりだね、おにぃ」
「……時に正論は、罵詈雑言よりよっぽどダメージを与えるんだ。ちゃんと覚えておくように」

 圧倒的正論に押し潰された俺は一気にシュンと肩を落とすも、ダンジョンが目の前ということもあって、直様立ち直って歩き始める。
 
 余談だが、俺達が身嗜みを気にしているのは、モンスターに会うからである。
 幾ら倒さないといけないとは言え、相手は俺達からしたら超絶有名な芸能人と何ら変わりない。
 そんな相手にだらしない姿を見せるわけにはいかないのだ。

 あ、モンスターに身嗜みは判らない、何て下らない反論をする奴は掛かってこい。
 ぐちゃぐちゃに論破してポイしてやる。

「おにぃ、ダンジョンゲート! ダンジョンゲートが目の前にある!!」
「おぉぉぉ……これが夢にまで見たダンジョン……!!」

 興奮した様子の凛音に袖を引っ張られて前を向けば……自動ドア越しに、不自然に空間の歪んだ青白い光を放つ丸い穴———ダンジョンゲートが目に飛び込んでくる。
 その現実離れした姿に、俺も妹と同じくテンション爆上がり。
 食い入るように見つめ……早く入りたい、と焦れたように同じタイミングで自動ドアの前に立ち、ドアに設置された認証システムに覚醒者カードをかざすと。

《覚醒者カードを確認。入場を許可します》

 そんな機械音声と共に、自動ドアが開いた。
 室内から外に向かって風が吹く。
 
「……凛音、覚悟は良いな? カメラは持ったな?」
「ふっ……愚問だよ、おにぃ。もちろん準備したよ……一眼レフをね!」
「流石俺の自慢の妹! それじゃあ撮りまくるぞ!」
「イエッサー!」

 こうして、俺達のダンジョン攻略が始まった。


 この時の俺達は知らない。

 まさかこの後、目を輝かせる俺達の攻略の様子を動画で撮られ……ネットを中心に大バズリするなんて。

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