文章にはそれぞれ、読んでいて気持ちのいい固有のテンポのようなものがあるように感じます。
また読者も、いま自分はこのくらいのはやさで読みたい、というテンポ感を持っているように思います。
文章には、さくさく読むのが楽しい軽快な語りもあれば、行間に目を凝らしてじっくり読むべき語りもある。一つの小説の中でも、あるところは素早く、あるところは時間をかけて、メリハリつけて読むのが楽しい、なんてことも多いでしょう。
そして読者の側にも、さまざま個人差があります。
そのうえただ一人のなかでも、日常生活について物思いしながら読むとき、物語世界に没頭するとき、体調がいいとき悪いときと、その時々によって読みたいテンポは変わります。
そういう、文書のテンポと読者のテンポみたいなものが、アンサンブルみたいに上手く噛み合ったとき、ひとつの楽しい読書体験が形づくられるのかもしれないなあ、などと考えています。
そんな訳で、私なりのゆっくりした速さで、いろいろな物語を楽しんでゆきたいと思います。
遅読の言い訳でした。