• 歴史・時代・伝奇
  • 異世界ファンタジー

人類滅亡小説フェスタで大賞をいただきました

どうも、藤田桜です。

この近況ノートは、拙作の『土に還る』https://kakuyomu.jp/works/16818023214005784252が外清内ダクさん主催の「人類滅亡小説フェスタ」https://kakuyomu.jp/user_events/16818023213267028054で大賞を受賞したよーっ、という報告なのですが、これ、一週間前くらいの出来事です。
なぜ今になってここで報告するのかと言いますと、私が近況ノートという機能の存在自体を忘れていたからでして。はい。うっかりなのです。

でもとっても嬉しかったのでご報告させてください。

本来『土に還る』はボツになるはずの作品でした。
前に「第一回NTR小説フェスタ」https://kakuyomu.jp/user_events/16817330665744415266と「総受けvs総攻めフェスタ」https://kakuyomu.jp/user_events/16817330668152935600に参加した際、たくさんお褒めを貰ってテンションの上がっていた藤田は、新たなフェスタ企画、しかも「人類滅亡」という素敵なお題の祭りが開催されると聞いて、やる気満々で筆を執ったのです。
で、数日くらい案を練ってから勢いに任せて書いたのが『土に還る』なのですが、
最初の印象は「思ったより小さく纏まってしまったな」というものでした。

やはりせっかく参加するなら賞を狙いたい。
でもこういう企画で受賞するのは爆発力のある作品が多いしなぁ……という思いが当時はあったので、一旦これはボツにして、もっと大きい小説を書くつもりだったのです。
でもじゃあなぜこれで企画に応募したのか。
書いてから一日経って読んでみると「なんかいい雰囲気で書けてるなー」という漠然とした感想が湧いたからです。「なんかこれいい感じな気がする」って。ほとんど勘です。でも私の勘が「これで応募したほうがいいんじゃない?」と囁いていました。

藤田の過去作を読んでくださっている方なら分かるかも知れませんが『土に還る』はかなり手癖に導かれて書いている作品です。「いつものやつだ」と思いながら読んでくださっている方もいらっしゃったりするんじゃないかと思ったり。
あとかなりストーリーラインがシンプルなんです。もう掌編の規模感のストーリーなんです。こう、盛り上がりで勝負できる感じの小説ではない。
やっぱり他の参加作を軽く読んだ感じでも、『土に還る』より明らかにクオリティが高い作品は多いです。いわゆる「小説ぢから」のある作品というやつです。
なので賞がもらえるとは思ってませんでした。なんか講評でいっぱい褒めてもらえたら嬉しいなーくらいの気持ちで参加していました。

ですが、勘は思ったより上空のところで当たりました。
まさかのグランプリ、大賞です。

多分、勘に従わずに理論に従って、癖よりも「凄さ」を重視した作品を書いていたら、この結果にはならなかったんじゃないかなーと思います。そういう、クオリティを最優先にした作品を書くとき、藤田はかなり力んで空回るので。空回るのもまた貴重な経験だとは思うのですが。小説つよつよ勢と同じ土俵で戦えば、瞬く間に蹴散らされたことだったでしょう。
また、受賞できたのはフェスタという企画の性質もあったと思います。複数人の評議員さんに認められるような「強い」作品ではなく、ただ一人の主催様のハートに誰よりも深く「刺さる」作品を書けるか。
たくさんの幸運が重なった受賞だったように思います。

なんだか、頑張って書いてきた甲斐があるなー、って嬉しくなっちゃいました。

更に嬉しいのが、他の参加作もとても素敵な作品ばっかり、ということなんですよね。全部読んだわけではないんですが、興味を惹かれた作品からパラパラ読んでいくだけでもう上手い、魅力的な人がうじゃうじゃいる。
この中で大賞いただけたのって、凄く光栄なことなんだなーと実感しました。

受賞作発表で「グッ……! と、僕の胸に刺さりましたよ!」と語り掛けるように書いていただいてたのもすっごい嬉しかったんですよね。舞い上がっちゃいました。ええ。

でもなんか全体的にちょっと卑屈に寄った受賞報告になってしまったので『土に還る』くんのいいところも書いておきましょうか。書いておきます。
この作品は「どういうものを書きたいか」にかなり自覚的に書けた作品なんじゃないかなーっと思っています。『土に還る』は元々「人類が滅ぶとしたら、ある日突然大災害が起きて滅びるのではなく、ゆっくり種全体で老いるようにして滅んでいくんじゃないか」「人間は老いると赤子のようになる」「じゃあ人間の種としての老年期と幼年期ってどんなのになるの?」「神話の時代や原始時代のようになるんじゃないの」というイメージから始まった作品でした。
なので本来、すっごい盛りだくさんの凝った小説になるはずだったんです。そういう規模感にする予定でした。「人類が少しずつ衰えていって、最後に残された兄弟が原始的な暮らしを送りながら、人類の科学や神話を素朴な形で口承文芸に纏めて人生を終える」みたいな形にするつもりだったんです。多分これ8000字くらい要るんです私の実力だと。
でも、それだと全体的に味が薄ぼんやりになってしまうんじゃないかという恐れがありました。多分登場人物の個々の苦労とか頑張りにフォーカスがずれてしまうので。あとシンプルにスタミナが足りなくて書けなくなる危険もある。なので要素を削ぎ落としました。徹底的に。「実のところ自分は何が書きたいんだろう」と問い掛けながら。
結果、元々イメージしていた世界観はなるべくちょっと言及するに留め、人類の滅亡が決まった世界での兄弟の関係性や、情景の美しさ、作品の香気に全振りすることに決めたのです。
すると小綺麗に纏まっちゃいました。でもなんかいい感じになりました。
多分直近の自主企画参加で経験値が溜まっていたのもあると思うのです。慣れた形の作品を、すごくのびのびと書くことができた。それでネタの鮮度を最大に活かすことができたんじゃないかなーと。
まあ後から振り返って言うなら何とでも言えるのですけれど、でもまあ、訪れた幸運をがっちりと逃さず掴んでくれるくらいには良い作品だったと思うのです。「いい子だねーいい子だねー! 偉いぞー『土に還る』くん! でかしたなぁ! こんなに立派になって」みたいな気持ちです書いた本人としては。
(小説や詩は、一文字一文字この世に生まれ落ちた瞬間に作者の手から巣立っていくものなんじゃないかって思いがあります。だって一度書いたら推敲しようとしても言うこと聞いてくれなくなるんだもの)

とりあえず『土に還る』について語りたいことは語りきったので、自作語りはここらで終えましょう。

最後に、
素敵な企画を開催してくださった外清内ダクさん、
『土に還る』を読んでくださった方々、
普段から応援して下さっているあろうみなさんにお礼申しあげます。
ありがとうございましたー!

追記
人類滅亡小説フェスタの講評はこちらhttps://kakuyomu.jp/works/16818023213266887179
藤田ホラ吹いてませんよ。本当に受賞したんですって。見てください、ほら。

2件のコメント

  •  あらためまして、すばらしい人類滅亡小説をありがとうございました!

     兄弟の関係性に狙いを絞る判断はまさに的確だったと思います。
     通常のエンタメ小説でしたら、事態の流れによってサスペンス性などを演出するところですが、文学的な視点で見れば、焦点となるエモーションに関わりない「余計な」文章を削って先鋭化させる方針もまた1つの道。
     その鋭さがあればこそ、僕という個人の感性に深く突き刺さったのだと思います!
  • 外清内ダクさん! こんな長い文章読んでくださって、しかもお返事までくださって……ありがとうございます。
    コメント拝読して「よかったー」と頬を緩ませております。
    重ね重ねにはなりますが、こちらこそ、素敵な企画をありがとうございました!
コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する