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伝説の坂田三吉、JKになる(笑)



シーン案:『盤上学園・恐怖の初登校 ~その転校生、授業中にワンカップを煽る~』
転校生、坂田美琴の初日

ざわ…ざわ…
盤上学園高等部1年A組の教室は、朝から落ち着かない空気に包まれていた。
「なあ、聞いた? 関西から、とんでもないのが来るって」
「なんでも、奨励会も通さずに、特例で編入してきたとか…」

ガラッ、と乱暴に教室のドアが開く。
入ってきたのは、担任の安高先生と、その後ろに立つ一人の少女。
着崩した制服、鋭い三白眼、そして何より、その身から発せられるピリピリとした野良猫のようなオーラ。教室の空気が一瞬で凍りつく。

「えー、紹介する。今日からこのクラスに加わる、坂田美琴君だ。みんな、仲良くな」

坂田美琴は、ボリボリと頭をかきながら、気だるそうに口を開いた。
「…坂田や。よろしゅう」

その一言で、教室の温度がさらに2度下がる。
生徒会長の芹澤環奈(セリーヌ)は、一番後ろの席で頬杖をつきながら、「へぇ…面白そうなオモチャが来たじゃない」と、値踏みするように美琴を見ていた。

事件は授業中に起こった

美琴が席に着き、最初の授業「棋史学」が始まった。
テーマは「徳川家康と将棋」。
退屈な講義に、クラスの半分が船を漕ぎ始めている。美琴も、机に突っ伏して完全に寝る体勢に入っていた。

…と、誰もが思ったその時。

ゴソゴソ…と、美琴が学生カバンの中から何かを取り出した。
それは、教科書でもノートでもない。
コンビニの袋に包まれた、丸いガラス瓶。

ワンカップ大関。

美琴は、誰に憚ることもなく、その蓋をキュポン!と小気味よい音を立てて開けた。
教室中に、ふわりと芳醇な日本酒の香りが広がる。

「「「「えっ?」」」」

クラス全員の視線が、一点に集中する。
寝ていた生徒は飛び起き、真面目に授業を聞いていた生徒は硬直した。

美琴は、そんな視線など全く気にせず、グビッ、グビッとワンカップを煽り始めた。

「ぷはーっ! …やっぱ、朝イチの講義にはコレやな。頭がシャキッとするわ」

シャキッとするわけがない。
クラス全員の心の声が、完璧にシンクロした瞬間だった。

教壇に立つ先生は、メガネを外し、何度も目をこすっている。
「さ、坂田君…? 君が今、飲んでいるものは…その、なんだね…?」

美琴は、きょとんとした顔でワンカップを掲げた。
「ん? ああ、これか? **『命の水』**や。関西じゃ、授業中の水分補給は常識やで?」

そんな常識は関西にはない。断じてない。

そのあまりにも堂々とした嘘と奇行に、ついに教室は限界を迎えた。

まず、一番に噴き出したのは、意外にも生徒会長の芹澤環奈だった。
「あっはははは! なにそれ! 最高じゃない、あんた!」
彼女の爆笑を皮切りに、教室は阿鼻叫喚と大爆笑の渦に包まれた。

「ウソでしょ!?」
「度胸ありすぎ!」
「ていうか、どこで買ってきたのよ!」

坂田美琴。
彼女が盤上学園にその名を轟かせたのは、盤上の戦いによってではなかった。
授業中にワンカップ酒を煽り、「これは命の水や」と言い放った、伝説の初登校日によってだったのである。

この事件により、彼女は学園内で**「ワンカップのミコやん」**という、全く名誉ではないあだ名を頂戴することになった。

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