11/16 短編3本制作記+α



 今日は、最近書いた短編3本の制作記です。




■「フェイです」

https://kakuyomu.jp/works/16817330666057996753/episodes/16817330666058016617


 『笑府』という、中国明代の笑話集からの抜粋・翻訳。

 以前に『聊斎志異』を翻案した時とは違い、今回は僕自身の創作要素はなるべく少なくして、原文に忠実な訳を心がけました。いや、まあ、単純に、省エネでサラッと書きたかった、というナメた理由なのですが……


 このエピソードは江戸時代には日本に伝わっており、古典落語『野ざらし』などの原案にもなっています。

 中国語では「妃」と「飛」が同じ発音であるところに由来するダジャレネタ。


 ラストで張飛が「俺の尻で奉仕いたそう」って言ってるのは、原文でも「まさに粗臀をもって奉献せんとす」……「今から(俺の)粗末な尻をあなたに献上いたそう」となっており、「張飛、あのナリで受け側なんだ……」ってところも味わい深い一作です。




■「冬は泣かない」

https://kakuyomu.jp/works/16817330666804116317/episodes/16817330666804140051


 クロノヒョウさんの自主企画に寄せて書いたもの。レギュレーションは2000字以内、テーマは「泣かない季節」でした。


 泣かない季節、泣かない季節……とテーマを舌の上で転がすようにして味わっていたところ、ふと、自殺した友人と、その喪失の悲しみを乗り越える主人公、という構図が頭に浮かび、あとは流れでスラスラーと書けました。


 いつも思うんですけど、夜の水面って怖くないですか? 海でも川でもそうなんですが、全く中を見通すことができず、生き物のように黒くうねっていて、飲み込まれたら二度と戻れないような不気味さがある……

 実際戻れなくなってしまった友人……引き止めることができなかった「私」……その怖さ、切なさ、どうしようもなさ……


 こういうエンタメ的な盛り上がりのない話はウケが悪かったりして悲しいのですけれど、僕自身としては、けっこう美しく書けたんじゃないかな、と、わりかし気に入っています。




■「金木犀キンモクセイは挿し木でえる」

https://kakuyomu.jp/works/16817330666956531462/episodes/16817330666956554704


 メンタルの治療の影響もあってか、長く小説を書けていなかったので、そのリハビリのためにとお題を募集して書いたものです。

 お題は「金木犀」と「届いた箱の中に」。惟風さん、遊喜さん、素敵なお題をありがとうございました!


 と言いながら、お題募集したのはなんと9月! 掌編一本に2ヶ月もかかっちまったい。長いことお待たせしてすいません。


 「金木犀」というお題を見た時、真っ先に頭に浮かんだのは「金木犀は死にたくても死ねなくて、かわいそうだなあ……」という感想でした。挿し木クローンで繁殖させられるってのは、言ってみれば己の意志に反して強制的に延命措置を施され続けるようなもんですからね……それも、「花や香りを楽しみたい」という人間のエゴで……


 というわけで、そこらへんを「死なせてもらえない人間」と結びつけて、出来上がったのが本作です。


 昔の作品を読んでいただいてる方には分かったかもしれませんが、これも「ヤドリギ魔法堂」シリーズの一作。

 今回はファンタジーではなくホラー仕立てということで、ラストは突き放したオチにしてみました。こんなおぞましい状況のまま、なにも物事が解決せずに終わってしまう不気味さが書けていたらいいな、と思います。




■さらなる新作について


 ところで今、さらなる新作を準備しています。

1)力を抜いて楽に書く

2)10万字の長編

3)カクヨムコンに応募する

 この3つをテーマにして、ぼんやりと話を練っています。


 本当は「勇者の後始末人」の続きを書きたいのですが、あれは本当に力を込めて書いてる関係上、なかなかいい感じに仕上がらず……

 衰えてしまった筆力を回復するためにも、まずは軽く長編一本書いてみよう! ということで、思い立ちました。全ての道は後始末人に通ず。


 かるーく書くというコンセプト上、いつもに比べて文章的な練り込みは浅く済ませるつもりでいます。そのぶんあっさり読める作品になるかも?

 とにかくやってみますので、どうぞ応援よろしくお願いします。

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