第6話 『テーマ』を決めろと言うけれど、ホントに大事なの?

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 ・テーマは、作品の方向性、雰囲気、味わいを決めるもの

 ・自身の想いをテーマとして掲げ、軸がブレないようにする

 ・テーマは作中で語られないが、疎かにするとチグハグな作品になる

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 ■企画を立てる上で最初に決めること


 企画を立てる際のアプローチは人によって様々ですが、

 私の場合は、最初に作品の『テーマ』を決めます。


 ノベルゲームにおける『テーマ』とは、

『ゲームを通してユーザーに訴えたいこと』です。


 ノベルゲームは小説と同じく、

 テキストを通じてダイレクトに『想い』を伝えられるので、

 テーマ決めはとても重要だと考えています。




 ■そもそも『テーマ』とは?


 辞書を開いてみると

「テーマとは主題。主要課題である」と書かれています。

 正直よくわかりませんね。


 ここからは空下の個人的な解釈になりますが、



 ○ テーマとは……


 ・物語の方向性、素材発注の指針となるもの

 ・作品の雰囲気をなんとな~く伝えるもの

 ・筆者の訴えたいこと。魂の叫び


 だと思っています。各項目を例を挙げながら見ていきましょう。




 ■『テーマ』によって作品の『方向性』が決まる


『テーマ』がハッキリしていないと、その作品は迷子になります。

 迷子、と言われてもピンとこないので『文化祭』を例えに出します。


 高校の文化祭では、必ずと言っていいほど『テーマ』が掲げられます。

 例えば、『飛翔』『エコ』『オリンピック』『地域交流』などですね。


 テーマがハッキリしていないと

 シンボルマークやコンセプトカラー、校門の飾り付けの方向性が見えず

 デザインを任された人は苦労してしまいます。


『飛翔』なら空、青色。エコなら、空き缶で作った校門。

『オリンピック』なら、ゲームで景品が増えるなど競技要素を入れてみる。

『地域交流』なら近隣の住民を無料で招待する


 など、方向性が見えてきます。

 もしも文化祭のテーマが『ゾンビ』だったら、どうでしょうか?


「ダークな雰囲気でいけってこと? テーマカラーは黒と紫かな」

「校門の飾り付け、墓地っぽくすると面白いかも!

「文化祭とハロウィンの合わせ技!? ゾンゾンしてきたばい!」


 という感じで、

『テーマ』を決めると「全体を覆うなんとな~くな雰囲気」が伝わります。


『テーマ』=『全体の雰囲気』『方向性』が

 ハッキリしないまま作業を進めると、

 テーマカラーは黄土色。シンボルマークはコアラ。

 校門に門松を置き、出店はすべてケバブの屋台!


 なんていう、デタラメな文化祭が開催されてしまうわけです。


 ゲーム作りも文化祭と同じで、

 中核となるイメージや『目指すべき方向性』がハッキリしていないと

 作品で表現したい想いや物語の展開が

 右往左往、二転三転してよくわからない作品になり果てます。




 ■『テーマ』=あなたが世に訴えたいこと


 テーマ決めの重要性はわかったから、内容の具体的な決め方を教えて?

 当然そういう流れになりますが、実はこれといった正解はありません。


『テーマ』は、作者の内側から自然と湧いてくるものです。


 常日頃から抱える想い(喜びや痛み)をカタチにして人々に訴えたいから、

 クリエイターは物作りを行い、世間に訴えるのです。

 その胸の痛みを文章化すれば、それで『テーマ』決めは終わりです。


 え? それじゃあよくわからない? ですよねー。


 というわけで、ここからは私が企画決めから参加した美少女ゲーム

『幼なじみは大統領』(※)を

 具体例としてあげて、テーマ決めの流れをみていきましょう。



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 ※『幼なじみは大統領』(©ALcot)とは?

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 朝目が覚めたら、

 隣に住んでいた幼なじみの美少女が、アメ○カの大統領になっていた!?

 という破天荒な設定の美少女ゲーム。


 宇宙人の陰謀で、隣家がホワイトハ○スになっており、

 主人公は副大統領として幼なじみをサポート。

 宇宙船を擬人化したロリっ娘や、超能力を使うエージェントなど

 様々なヒロインが登場。さらには、○シアの大統領と言い張る

『イリーナ・ウラジーミロヴナ・プチナ』が現れて求婚してきた!?

 という、ライトなノリのドタバタSF作品です。


 明るく熱く爽快感のあるシナリオ&可愛いらしいヒロインとの

 やり取りで好評を博し、ユーザーから高い支持を受けました(自画自賛)。

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 ■『テーマ』決めの流れ:幼なじみは大統領の場合


『幼なじみは大統領』のテーマは、

『できるかできないかわからないなら、やってみよう!』でした。


 これは、某アメリカ大統領の○バマさんのスローガンが

 元ネタになっています。(Yes We Can. Yes We Did.)


「大統領を美少女にする」というコンセプトが最初にあり、

 社内の方針や私の想いとも合致していたので、テーマに掲げました。


 できると思ったならやった方がいい。

 その結果、本当にできるかもしれない。

 うじうじ悩んでいても何も始まらない。まずは一歩踏み出そう。


 何かを成し遂げる人間とは、一歩踏み出せる勇気を持つ者。

 その人に力(権限や立場、腕力など)があってもなくても、変わらない。

 たとえ力がなくても、やろうと思った人間に結果はついてくるのだ。


 ……というテーマを、


 大統領としての権限を持つヒロインが有言実行していく。

 権限を奪われたが頑張って奪い返して、夢を果たす……

 という具合に、

 作品の雰囲気、設定やシナリオの流れに絡めていきました。


 ALcotで今までリリースしてきた作品とは毛色が異なり、

 社内的にも大きな方向転換を試みた作品でした。

 そういった意味でも『やってみよう』の精神が根底に流れています。




 ■自身の体験、想いを『テーマ』にするのは常套手段


 元ネタがある場合や、日頃から思い描いていることがあれば

『テーマ』を決めるのは比較的簡単でしょう。


「最近の政治はたるんでおる! 美少女を大統領にして活を入れてやる!」

 という想いを抱いていた場合、作品は政治批判に向かったはずです。


『幼なじみは大統領』の場合、

「今回はギャグ。重く苦しいネタを入れない」という大前提もあったので、

「やってみよう」「次、いってみよう」「ドリフ?」みたいな軽いノリで、

 ドタバタSFアクションものを描くことに決めました。

 これが前記した『作品がもつ味わい』を決めるということです。



『テーマ』は、作品毎に変えなくてもかまいません。

「戦争の悲惨さを映像を通して訴える」という一貫したテーマを掲げ、

 ジャンルや媒体、運営会社を変えて映画を撮り続ける監督さんもいます。


 また、所属するサークルや会社、クライアント(様)からの依頼で

 テーマを決め(られ)ることもあります。


 あなたが純愛モノで愛を訴えたいのに、会社は陵辱モノを求めているなど、

 企画を立てるあなたの信条と合わないと、お互いに不幸な結果になります。

 テーマのすり合わせ、方向性の確認は怠らないようにしましょう。




 ■まとめ


『テーマ』は、作品の方向性、雰囲気、味わいを決めるもの。

 次回から解説する『企画の予算決め』『スケジュール決め』だけでなく、

『キャラ設定』『世界設定』『台詞回し』などにも深く関わってきます。


「テーマとは主題。主要課題である」

 これを肝に銘じて、作品の『軸』がブレないようにしましょう。





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