季節の物語「冬の章」の構想



「四季折々に揺蕩う、君に恋焦がれる物語。」全4章各4話構成の短編小説。

最後の物語「冬の章」。カクヨムコンのため、予定より1ヶ月遅れてしまいました。あんまりこの作品は読まれてはいないはずなのですが、もし待っていてくださった方がいましたら、お待たせしました~。


秋の章が長すぎたので、反省しつつ、冬の章は読みやすい文字数にしたいですね。

最初の構想では、不器用な神様がどんどん惹かれていく、な設定にになる予定でしたが、最初から『一目惚れ→溺愛』な感じになっていたり?

ということで、冒頭が完成したので更新しました。


※内容は再度変わる可能性もあります。こんな雰囲気のお話、という軽い気持ちで待っていてくださればありがたいです。1/31更新。



【 ~冬の章~ 】



 ゆずりはは、屋敷の外へ出ることを禁じられている。


 村の掟で、生まれたその瞬間から山神様の花嫁になることを決められていたからだ。それは男でも女でも関係なく、極月ごくづきに生まれ、ある"印"が身体に現れた子が選ばれる。


 その印は痣のようなもので、形は特殊。小さな三日月に似たその印こそ、山神様の花嫁となる証となるのだ。


 親以外はその顔を見てはならない。

 触れてはならない。

 声を聞いてはならない。


 故に、厳重に屋敷の中に匿われる。もちろん、村の者たちもその掟に従い、好奇心で覗く者は誰ひとりとしていなかった。それは、山神様の怒りに触れることを恐れているからだ。山神様の怒りは村ひとつ潰すことなど容易く、それが迷信などではないことはすでに証明されていた。


 十五歳の誕生日を迎えたその日。良く晴れた空の下、頭から顔を隠すための白い面紗を被され、白無垢を纏ったゆずりはは、村の若い衆が担ぐ籠に乗り、山神様の待つ山の頂へと連れられて行く。


 半日かけて辿り着くと、担ぎ手たちは籠を置いて無言で去って行った。

 雪を踏む独特な足音が遠のいていくのを聞きながら、俯き、自分がこれからどうなるかもわからないまま、ゆずりはは静かにその時を待つ。


 少しして、リン、と涼やかで清い鈴の音が辺りに響いた。


 籠の外に気配を感じたが、口を開いて良いのかもわからず、じっと前を見据える。面紗で薄っすらとしか見えない視界の先、籠の扉が開かれ光が射し込むのが見えた。

 

 手を差し伸べるようにこちらに向けられた生白い指先に、ゆずりはは戸惑いながらも右手を伸ばす。被されていた白い面紗が、同時にそっと外される。


 光。


 眩しいほどの光が瞼を焼くようだった。白銀の世界に立つ、ひとりの青年の美しさに、思わず見惚れてしまう。


「俺の名は銀花ぎんか。お前の名は?」


 山神様は自ら名乗り、ゆずりはの手を優しく握ったまま訊ねてくる。

 

 その瞳は赤く、後ろで結われた長い髪の毛は白髪だった。青い単の上に白い上衣を纏う神は、確かに神秘的であり、不思議な雰囲気があった。


「わ、私は······ゆずりはと申します」


 頭を下げ、ゆずりはは遠慮がちに答える。その声は細く、中性的だった。屋敷の外に出たことがないので、細身で色白。両親とさえほとんど話す機会がなく、他の者となど一度も話したこともないので、緊張したのか声も小さい。


 そんなまだ幼さの残る少年に対して、銀花ぎんかは少しも咎めることはなく、その秀麗な顔に笑みを浮かべるのだった。



✽✽✽✽✽✽



冬の章は「旅立ち」がテーマ。季節の物語ラストのお話となります。

公開は2/4しております。

読んでいただけたら、幸いです。


「四季折々に揺蕩う、君に恋焦がれる物語。」春、夏、秋の章、公開中↓

https://kakuyomu.jp/works/16817330654881627031

⚠ 和風BL小説となっておりますので、苦手でなければ、どうぞ!





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ひとり言 柚月なぎ @yuzuki02

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