二十二、幸せな時間
そうしている内に事態は色々と展開していて、今は各一族から数人ずつこの
顔馴染みも数人おり、
そんなふたりに偶然出くわしたのは、
「あれ?姐さんたちも市井に行くの?」
自分の声に反応して、門の前にいた美人ふたりが同時に振り向いた。いくつになっても迫力美人な
あれから何度も
ふたりが来ているのは知っていたが、
思い出したように腕を前に囲って作揖し、行儀よくお辞儀をした。
「
「
「また背が伸びたんじゃない?あの子とほとんど変わらないもの。市井に行くなら一緒に行きましょう?」
ふたりは嬉しそうに交互に
それに気付いた
「五人目がもうすぐ生まれるの。今度こそ男の子だと思うわ。だってものすごく元気にお腹を蹴って来るんですもの」
「
大きな腹は、今にでも赤子が出てきそうで、
他の四人の子供たちは下の子が五歳、上の子が十二歳だったはず。毎回訪れるたびに一人増えていたような記憶さえある。
「私もそう言ったのだが、聞かなくてね。戦に出向くことはないが、
「ふふ。あとふた月もすれば生まれるかも。良いことを思いついちゃった!
「だめだよ、俺なんかに頼んじゃ!旦那さんが普通は付けるんじゃないの?」
突然の提案に
「いいの!これも何かの縁だもの。私は
「わ、わかった。でも嫌だったら断ってよ。俺、そういうの苦手だからさ。その時は
頬を搔きながら照れた顔を見られないように横を向いて、肩を竦める。お願いね!と満面の笑みを浮かべられ、なにも言えなくなった。
「では一緒に行こう。どこか行きたい場所はあるか?私たちは息抜きがてら茶でもしようと思っていたのだが」
宗主が従者も付けずに歩き回るのはどうかと思うが、
なにより
「俺はふたりに気を利かせて邸を出てきたら、特に行きたい場所はないよ?姐さんたちの護衛も兼ねて、好きな場所に付き合うよ」
「頼もしいかぎりだな」
わしゃわしゃと髪の毛を撫でて、
三人はゆっくりと長い石段を下りていく。
(俺は、このふたりを守りたい。この場所を守りたい。俺をふたりが守ってくれたように。ずっと、この三人でいる場所を)
帰る場所はここだと、ここでいいのだ、と。
「おかえりなさい」
「ただいま。門の前で姐さんたちと偶然会ってさ。一緒にお茶してきた」
「そういえば
「名前を考えてって言われたよ。俺、どうしたらいい?」
甘えるように
他愛のない話をし、こうやっていつまでも一緒にいられたら、それだけで良かったのに。どうして、そんなささやかな幸せさえ許されないのか。
ここに来て何度目か解らないほど見た夕焼け空を見つめ、
そんな願いも虚しく、別れの時は、もうすぐそこまで来ていた。
〜了〜
そして、物語は本編へと引き継がれる――――。
【〜起承編〜】第五章21話以降へと続きます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139555360581458/episodes/16817330651349034112
誠に勝手ながら、この【−泡沫語−】は、二十二話で「完」にすることにしました。本編で結末を書いてしまっているので、この終わり方がベストかな、と急に思い立ったためです。正直な話をすれば、しんどい結末なため、再度書くのが辛いというのもあります。
本編をすでに読んでいただいた方は、ご存知のとおりです。彼らのお話は、楽しいことも悲しいことも、本編の回想などで続いていきますので、どうぞお楽しみに!
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございましたm(_ _)m
※現在、コンテスト参加のため、本編は第三章以降が未公開となっております。コンテスト終了後再度公開しますので、ご了承くださいませ!
彩雲華胥 ー泡沫語ー 柚月なぎ @yuzuki02
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