お人形の夢と目覚め

単なるジュブナイルの枠では捉えることのできない青春小説です。

誰もが通過する幼き日の追憶が、哲学の領域まで掘り下げられ、テーマに設定された音楽に乗せて進行する――

書かれているというよりもむしろ、奏でられていると言いたくなるような心躍る感覚を禁じえません。

主人公たちの出会い、葛藤、成長を通して、物語は続いていく。

それはきっと、音楽がやんだあとも。

誰もが知っている、けれども忘れてしまったあのときめきが、ここに封印されているような気がします。

どんなふうに生きていけばいいのかわからない女子高生 遠野まわたと、生きたかった明日を迎えられなかった少女の夢が重なるときに、物語が動きだす。

綺麗な旋律の詩を読んでいるような文章の流れに美しく飾りつけられたルビ。著者様の世界観がふんだんに落としこまれた素敵な小説で、夢のなかに惹きつけられ吸いこまれるように夢中で拝読させていただきました。
短編なので、言葉を重ねるほどネタバレになってしまうのがつらいところ。ぜひとも読んで確かめてください。こころが優しくなる、そんな物語です。

とてもやわらかな手触りの夢をみていたような、そんな読了感をいただきました。

おとなのためのお伽噺のような、やさしい…続きを読む

どこかで耳にしていそうな、そんなシンプルな、見過ごしそうな言葉を拾い上げて、こんな優しい物語ができあがるとは。
空っぽになっていくだけのお人形を目覚めさせてくれたもう一人のお人形。一度だけの出会いは、お互いにとってかけがえのない出会いになる。
ハッとするフレーズがある。
何度も目をなぞらせたくなるフレーズがある。
心を洗うようなフレーズがある。
この物語そのものが、ひとつの美しいピアノ曲のようです。
どうか、その音色を、ご自身で確かめてください。

エプロンドレスに身を包んだ可愛らしい少女が奏でる、少したどたどしいピアノ曲。
それだけで自然に笑みがこぼれてしまいます。
そんな、不思議な喫茶店に迷い込んだ主人公・まわたは、自分の将来を決めかねていて……。

優しい出会いが、さらなる優しい出会いへ繋がっていく。

ゆったりと紅茶を飲んで、ピアノを聴きながら読みたくなるような、可愛い夢がたくさん詰まった物語です。

まず、全体を通して文章がとても美しい。
本当に読んでいてピアノの音色が聞こえてきそうな気がしました。

そして、主人公の悩みは女子高生らしい将来をどのように歩もうかというもの。

多くの小説でこういったテーマを取り扱われてきましたが、この作品の導き方は終始鮮やかであり、とても綺麗なストーリーとなっています。
読んでいて心が澄んでいきました！

是非、ご覧下さい！

静謐な文章。

緑青色の看板。鈴の音が迎える喫茶室。
メロディードールの、幻想的な空間。

少女の、たどたどしい、けれど心に響くピアノの調べ。

作者様の描き出す世界は、耳に心地よく、心に優しい。

未来に惑う全ての方に、お届けしたい作品です。

どう生きるべきか分からず悩む、高校生のまわたは、ある日不思議な出会いをします。それは、まわたの人生に静かな、けれど大きな影響を与えます……
文章を読んでいるだけのはずなのに、たどたどしくも美しい旋律が聞こえてくるような、どこか幻想的なお話でした。

　主人公はどこにでもいるような、女子高生だった。友人はいるけれど親友はいない。現実的な目標もない。ただ、ピアノだけが唯一残っていた。
　そんな彼女が古びた喫茶店で、奇妙な経験をする。喫茶店で主人公を出迎えたのは、メイド服を着た少女だった。歳を尋ねると少女は「享年十二歳」と答える。少女が働いている理由を尋ねると、少女は「働く」ことの意味を主人公に教えてくれた。そして少女はたどたどしいながらも、喫茶店にあったピアノを弾いてくれた。
　働きことの意味、そしてピアノが、主人公の目標を明確にしてくれた。
　主人公は後日、再び喫茶店に行こうとするが、あったはずの所に見当たらない。話によると、喫茶店はベー…続きを読む

常にピアノ曲が背景に流れているようなそんな雰囲気がとても素敵でした。

冒頭の少女の夢が叶う時、主人公の心が動きだす。
主人公の自分のやりたいことへの悩みが少女の言葉を聞いて解決される。
それはまるで眠っていた人形が起きて踊り出すように。

傍楽。本当に素敵な言葉でした。

この物語は何といっても美しい文章が魅力的です。

世界観を香りのよい珈琲のように匂わせ、そして綴られていく物語に惹き込まれて行きます。　

気になる方は、ぜひ「お人形の夢と目覚め」の世界にある喫茶店「メロディードール」にお立ち寄りくださいませ！