圧巻。ああ、これがカクヨムで言うところの『現代ドラマ』なのだなと、深く思い知らされました。まさにトンカチで頭を殴打されたかのような……。
物騒な喩えになってしまいましたが。
だんだんと主人公(というより、謎多き人物)・悦子の人生において、いつ、何があったのか? それが明確な文章の形をとって、読者である我々に開示されていく。
それが貴作の主な形式ですが、描いている『内容』と『文体』が、恐ろしいほどマッチしています。
魔法もビームもハイメガキャノンもない現実世界、そこにぽつんと存在するゴミ屋敷。
そこからどのくらいの規模で、どのくらいの人数を登場させるか?
それが計算し尽くされていて、どんどん引き込まれます。
文体に関しても同じく。
どの要素をどの程度広域展開すべきか・あるいはせざるべきか、その取捨選択が凄すぎる。
最早『巧みだ』だの『洗練されている』だのといった有体な言葉では表しきれません。
これは……一種の恐ろしさというか、怖いもの見たさというか。
それを欲して、我々は否応なしに、しかしきちんと体勢を整えた上で、一文一文を吟味させられてゆきます。
上述しましたが、凄い。凄すぎる。人物描写が特に、生々しくてある意味美しい。
わけの分からないレビューになってしまったこと、皆様(特に著者様)にお詫び申し上げねばならぬところです。
タイトル通り、ある日ゴミ屋敷の住人である老女が死んだ、というところから始まる物語。市役所職員とボランティアによってゴミ屋敷の処理が進められるなかで、ひとりの女の人生が浮き彫りになってくる。
ゴミの城と化した屋敷へ一歩ずつ足を踏み入れるごとに、読者も誘われるように「彼女」の過去へと入り込んでしまう。今は口を開くことのない彼女の代わりに、ゴミがその人生を物語る。そこには「ゴミ屋敷の住人」という表面からは計り知れない奥深いドラマがある。
過去と現在をつなぐオブジェの数々。そのひとつひとつにも物語があり、その時を必死で生きた女の姿が刻み込まれている。
読者は彼女を知るほどにもっと知りたくなるだろう。そして理不尽な運命に憤り、愚かさにため息をつき、束の間のあたたかさに安らぎを覚える。そして、読後にはあたかも彼女が本当に存在したかのように、その姿が脳裏に残ることだろう。
本作はそういう作品である。
まず、タイトルが素晴らしいです。
この一文だけで、10万字を超える長編の始まりが見事に表されています。
タイトル通り、ある日ゴミ屋敷の女主人が亡くなります。
警察の捜査が入りますが事件性はないと判断され、それから市役所環境課による屋敷の壮絶なる処理作業が始まるわけですが…。
環境課の職員・優馬は大量のゴミのひとつひとつに故人の人生の意味を捜します。
不思議なゴミの様相、近所の人の話などから、花村悦子という名の故人の生き様が少しずつ解かれていくのです。
その人生は壮絶かつリアル。
まさに現代社会の問題点を多数浮き彫りにしているかのようで、その中で翻弄されながら生きてきた悦子という人物像を、読者も夢中で追わずにはいられなくなります。
なぜ彼女はゴミ屋敷を形成してしまったのか。
その理由はどうしても知りたいところ。
読者の興味がググっと引き付けられます。
読了後、様々な思いが読者の心に沁みわたることでしょう。
どこまでもリアルを追求し、都合の良いエンタメに走らない社会派小説だと感じました。
これだけの物語を書ききる手腕、お見事でした!
読む前に知っておいていただきたいのは、この物語は善人と悪人がはっきりと分かれたお話ではないという事です。
きっとアナタが好きになれない登場人物も出て来る事でしょう。
ですが、そこがこの作品の醍醐味かなと思います。
犯罪者が倫理的にも絶対的に悪、犯罪に問われたことが無い人が絶対的に善などという事は現実にはなかなか無い事なのだと、この作品を読んで改めて気づかされました。
まさかゴミ屋敷の住人の死から、こんなに物語が広がっていくとはッ!
驚きました☆
主人公はもちろんの事、主人公と関わった登場人物たちの心理描写にご注目いただきたいです。とても細かく描写されています!
人間の良いところも悪いところもぎゅっと詰まった物語でした。
町でも有名なゴミ屋敷に住む一人の老婆が亡くなります。
彼女は近隣の人から厄介者として扱われていました。
そしてゴミ屋敷は行政とボランティアによって片付けられていくのですが、そこからゆっくりと彼女の人生が紐解かれていきます。
そこから描かれていくのは一人の女性の濃密なドラマであり、ゴミ屋敷を築いたミステリーであり、感情を静かに揺さぶる文学でもあります。
とにかく面白いの一言に尽きます。そしてすごく胸に残る物語でした。
どんなに抗おうとも何度も襲い掛かる過酷な運命、そこで彼女が下す決断は良いとか悪い、正しいとか間違っている、なんてことを簡単に吹き飛ばします。
彼女はゴミ屋敷の主人、立派な人間とは言えないでしょう。でもどうにも人間らしくて、正直で、憎めない人でもあるのです。だからこのストーリーから目を離せない。
あらすじはこんな感じなのですが、まずは本文をぜひ読んでください。
文章は読みやすく、人物の描写はこまやか、そして映画を見ているように過去と現在のシーンが溶け合うように行き来します。
そこから鮮やかに立ちのぼる一人の女性の生涯、そのありさまを描ききった筆力もまた素晴らしいと思いました。
主人公はゴミ屋敷を片付けることになった三十路の男。ゴミは層をなし、崖となり、行く手を阻む。しかしその層は、まさしくゴミ屋敷の主の人生そのものだった。そして謎の指輪2つが、猫砂を敷き詰めたタンスから出てきた。さらに主人公を驚かせたのは、あれだけのゴミに埋もれながら、寝室だけはきれいな状態で残されていたことだった。一見、不可解なゴミ屋敷。
しかし、そこはかつて一人の美しく明るく、誰からも好かれる女性の家だった。女性はキャバクラで働いていたが、ある事件を契機に転落していく。そして「神の声」に導かれるように、ゴミを集めだす。そのゴミの中の玩具を近所の子供に与えていた。女性は、野良猫に餌をやり、一人の男の子を救い、そして死を迎えた。
それから数年。ゴミ屋敷はなくなり、土地が売却された。
主人公が体験するゴミ屋敷の状態と、生前のゴミ屋敷主人の人生が交差するように紡がれる人間ドラマが、ここにある。
果たして、彼女の身に降りかかった事件とは?
2つの指輪の意味とは?
彼女とその屋敷の織り成す人間模様に、心打たれる。
是非、ご一読ください。
まずはタイトルそのままに、ゴミ屋敷に住む一人の年配の女性が亡くなったところから物語は始まります。
市役所職員がゴミ回収をしていく模様と平行して、亡くなった彼女がどんな人生を歩んできたかが書かれます。
ゴミ屋敷と聞くと、周辺の方々への迷惑やトラブルを連想する方も多いでしょう。もちろん彼女にも、そんな一面はありました。ですがそこに至るまでには、さまざまな人との繋がりが、あるいはその繋がりを断ち切る出来事がありました。
優しい事ばかりではない、どちらかと言えば、辛いことや人には言えない事の方が多かった人生だったのかもしれません。なら、彼女の一生は救いのないものだったのでしょうか?
その答えは、読んだ人それぞれが考える事なのかもしれません。
社会問題に真摯に向き合った珠玉の作品です。
……と書くと、お堅く感じるかもしれませんが、まずはお手に取ってみてください。
たちまち人情味あふれる人物像が浮かび上がってくるのではないかと思います。
この作品を拝読して、人生って何なのだろう? と、しみじみ考えさせられました。
文章が丁寧で、登場人物に対してもとても誠実なので、内容が心にすっと抵抗なく染みこんできます。
まだ連載中で、なにやらミステリーの様相も。
私自身も続きを楽しみにしています。
この梅雨時に、部屋でお読みになる小説のひとつに、こちらの作品も加えていただけたら幸いです。