一人の女性の人生を描ききった素晴らしい物語

町でも有名なゴミ屋敷に住む一人の老婆が亡くなります。
彼女は近隣の人から厄介者として扱われていました。
そしてゴミ屋敷は行政とボランティアによって片付けられていくのですが、そこからゆっくりと彼女の人生が紐解かれていきます。

そこから描かれていくのは一人の女性の濃密なドラマであり、ゴミ屋敷を築いたミステリーであり、感情を静かに揺さぶる文学でもあります。

とにかく面白いの一言に尽きます。そしてすごく胸に残る物語でした。

どんなに抗おうとも何度も襲い掛かる過酷な運命、そこで彼女が下す決断は良いとか悪い、正しいとか間違っている、なんてことを簡単に吹き飛ばします。

彼女はゴミ屋敷の主人、立派な人間とは言えないでしょう。でもどうにも人間らしくて、正直で、憎めない人でもあるのです。だからこのストーリーから目を離せない。

あらすじはこんな感じなのですが、まずは本文をぜひ読んでください。

文章は読みやすく、人物の描写はこまやか、そして映画を見ているように過去と現在のシーンが溶け合うように行き来します。
そこから鮮やかに立ちのぼる一人の女性の生涯、そのありさまを描ききった筆力もまた素晴らしいと思いました。

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