あなたの近くにも潜むリアル。その人の死は様々な人生を読者に投げかける。

まず、タイトルが素晴らしいです。
この一文だけで、10万字を超える長編の始まりが見事に表されています。

タイトル通り、ある日ゴミ屋敷の女主人が亡くなります。
警察の捜査が入りますが事件性はないと判断され、それから市役所環境課による屋敷の壮絶なる処理作業が始まるわけですが…。

環境課の職員・優馬は大量のゴミのひとつひとつに故人の人生の意味を捜します。
不思議なゴミの様相、近所の人の話などから、花村悦子という名の故人の生き様が少しずつ解かれていくのです。

その人生は壮絶かつリアル。
まさに現代社会の問題点を多数浮き彫りにしているかのようで、その中で翻弄されながら生きてきた悦子という人物像を、読者も夢中で追わずにはいられなくなります。

なぜ彼女はゴミ屋敷を形成してしまったのか。
その理由はどうしても知りたいところ。
読者の興味がググっと引き付けられます。

読了後、様々な思いが読者の心に沁みわたることでしょう。
どこまでもリアルを追求し、都合の良いエンタメに走らない社会派小説だと感じました。
これだけの物語を書ききる手腕、お見事でした!

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