たった一つの歪みが、兄妹の人生を狂わせた

愛する父と母の死。そして、そこから始まる兄との共同生活。
妹である彼女の、チェントの視点によって語られる後日譚とも違う物語。

彼女の体験した人生、その最初から遡って、なぜそこに至ったのかを語る物語だった。

兄は妹を守り、妹は籠の中の鳥の如く、守られる立場でいる。兄は妹を守ろうと幼い身体を酷使し、その上で数々の修羅場を駆け抜けたのだろう。
幼い身に余る程の、痛みを。

兄にとって、妹とは守るもの。なのに、彼は妹を傷つけてしまった。それが、この兄妹の人生を歪ませる、あるいは狂わせる岐路であったのだろう。

兄は、英雄とも呼べる偉業を成し遂げて来たのだという。兄に救われた青年が言っていた事を、妹は到底、信じる事ができなかった。

なぜなら、兄は私に恐怖と痛みを、トラウマを植え付けた存在だから。


物語は巡って、兄妹が成長していくに連れて各国を巻き込むほどの戦争へと、世界は移り変わっていく。
その最中、妹である少女は数奇な運命を辿る事になる。それは、彼女に強さを齎すだけでなく、一粒の幸福を与えてくれた。


兄は、何かに取り憑かれたように、ひたすらに敵と定めた魔王を討たんと戦場を駆け巡る。
妹は、愛する者の為、あるいは兄という存在を克服する為、運命の渦中へと身を投じた。


これは復讐劇だった。されど、悲劇でもあった。


重厚なストーリー展開、一人ひとりの人間を描き、この物語の中で生きている様は、脳内に物語の光景を映させた。


とんでもない作品に出会えた事に、今は感謝を。

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