人の心が鮮明に描かれた呪われし兄妹の愛憎劇

主人公チェントの過去の記録とその懺悔として描かれている今作は、確実に一読の価値がある名作だと思います。ラストシーンは少しインディ・○ョーンズ感があって好みではありませんでしたが、それを踏まえても良い作品だと思います。

チェントのトラウマと兄に対する復讐心が本人の視点で生々しく語られており、読んでいるこちらもそのチェントの暗い感情に引き込まれていく感覚でした。怖い怖い。
また、兄ヴィレントの秘めた苦悩もリアリティに溢れていて、それが表に現れていたシーンでは本人の視点を書かずしてここまで描き切るかと、作者様の才能と現実味を帯びさせるための知識にもはや背筋が凍る思いでした。
兄妹の憎しみと呪われた運命の物語のキーとなるのは彼女たちの感情の描写であり、作者はそれを描き切った。この事実だけで今作は名作であると言いきれるのではと私は思います。

良い読み物をありがとうごさいました。

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