淡々と語られる少女のいびつな人生が、読み手に突き刺さる

 独白という形で語られる、一人の女魔道士の物語です。幼い頃より兄から虐待を受けて育ったチェントは、ずっと兄に怯え、自ら考えることも放棄して生きてきました。しかしある日、敵国にさらわれた彼女の運命は大きく変わっていきます。
 ようやく手にした力と居場所、そして誰かを愛するという気持ち。しかし、兄への憎悪の上に成り立つそれは、兄の呪縛から逃れることも出来ず、やがて復讐という形に変わっていきます。
 主人公の独白は、事実を淡々と語るだけで、そこに言い訳めいたものはありません。だからこそ、彼女の歪んでしまった人生が深く読者に突き刺さってくる物語です。

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