概要
親を失った幼い兄妹は、2人きりで生きねばならなかった。
兄は、日々の苦しさと怒りを妹にぶつけた。妹はただ耐え忍ぶしかなかった。
大人になった兄は名声を得た。妹には何も残らなかった。
そして、彼女は歪んだ。
※この作品は、アルファポリス・小説家になろう・エブリスタ・カクヨム・暁・マグネット・comico・魔法のiらんど、で並行連載されています。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!お勧めの作品です
歯車が狂ったのはいつなのだろうか。
幼くして両親を亡くした少女の頼りは、四つ上の兄ただひとり。
彼は彼女と自分の食料を調達せねばならなかった。
12歳の彼にとって、それはまさに地獄そのものだったのだろう。
神経を擦り減らす過酷な状況のなか、必死にもがいて生きていた彼が、空腹で喚く彼女に怒りを表したのは、仕方のないことなのかもしれない。
このことが契機となって、兄妹の仲は徐々に、しかし確実に悪化していった。
果てに、憎しみ、殺しあうまでに。
文章で、物語の暗さが良く表されている。
なぜ殺しあう羽目になってしまったのか、そこまでの過程に浸かりながら話を読んでみると良いのかもしれない。
時折差…続きを読む - ★★★ Excellent!!!淡々と語られる少女のいびつな人生が、読み手に突き刺さる
独白という形で語られる、一人の女魔道士の物語です。幼い頃より兄から虐待を受けて育ったチェントは、ずっと兄に怯え、自ら考えることも放棄して生きてきました。しかしある日、敵国にさらわれた彼女の運命は大きく変わっていきます。
ようやく手にした力と居場所、そして誰かを愛するという気持ち。しかし、兄への憎悪の上に成り立つそれは、兄の呪縛から逃れることも出来ず、やがて復讐という形に変わっていきます。
主人公の独白は、事実を淡々と語るだけで、そこに言い訳めいたものはありません。だからこそ、彼女の歪んでしまった人生が深く読者に突き刺さってくる物語です。 - ★★★ Excellent!!!罪の記録であって、贖罪の記録ではないからこそ、決別が克明に描かれる
主人公の半生を見た時、登場する人は変わるものの、人に対する視点はある種、固定化されており、それが彼女に数奇な人生を歩ませることに。
根底に垣間見えるのは、自身を悲劇のヒロインとして捉えようとする思考の癖と、それに合致しない現実世界。
「悪魔にとりつかれたかわいそうな女の子」という表現はそういった点では、終始、影響力のあるシナリオの背骨となっている。
普段からの負荷によって人格が深まるというものを戦闘訓練になぞらえているのも面白い。
克服と決別
チェントはなるほど嫌われているかもしれないが、自身から語り掛けることもなく、また反対に、豪華な待遇を得るも馴れはしないといったように、上記のヒ…続きを読む