現代格闘技小説「スーパイ・サーキット」では三つの団体による、「格闘技三國志」とも呼ぶべき三つ巴のパワーゲームを物語の軸として描いていきます。
「プロの選手」として、果たしてどの団体に付くべきか、メリットとデメリットは何か。誰が敵で誰が味方なのか……。
所属団体の思惑に翻弄され、明日をも知れぬ状況を前に決断を迫られる現代格闘家たちの「リアル」を丹念に追いかけます!
①天叢雲(アメノクラクモ)
トトカルチョなど「黒い噂」を原因として2000年代半ばに日本では一度、総合格闘技の文化が途絶えたが、東日本大震災の復興支援を掲げて当時の選手を中心に新団体が旗揚げされた。それが天叢雲である。
被災地を応援するチャリティー大会以降、日本各地で興行を行うなど行政と共に地方振興にも力を注いでいる。
ただし、旗揚げの中心となったのが2000年代に活躍した選手ということもあり、団体自体の高齢化がしばしば問題視されている。
試合はロープで四方を囲むオーソドックスなリングで行われる。
団体代表者は格闘技雑誌「パンチアウト・マガジン」のもと編集長、樋口郁郎。更なる飛躍を期待してアメリカの総合格闘技団体と合同大会を計画する。
②NSB(ナチュラル・セレクション・バウト)
名実ともに世界最大の規模を誇るアメリカの総合格闘技団体。数年前にドーピング問題で揺れたが、辛くも切り抜けた。
日本の総合格闘技が一度、途絶えたときに行き場をなくした選手たちの受け皿にもなった。
その一方、所属選手との契約などを巡って連邦公正取引委員会から独禁法違反に問われ、更には総合格闘技に反対する有力議員の突き上げまで受ける。
危機的状況の中、とうとう欧州から買収の手が伸び、起死回生を図って天叢雲と合同大会を開催。日本における総合格闘技の「市場」を奪い取ろうと画策する。
八角形(オクタゴン)の金網の中で試合を行う。
団体代表者はハワイ出身の日系アメリカ人、イズリアル・モニワ。権謀術数にも長けた女傑である。
③ランズエンド・サーガ
欧州全土に勢力を拡大する打撃系立ち技格闘技団体。
天叢雲のメインスポンサーである世界最大のスポーツメーカーがバックに付いている。
ここ数年で中東にも進出し、オイルマネーとも結び付くなど勢いは増すばかり。
総合格闘技がなかなか根付かない欧州にその文化を広めるべく、知名度の高いNSBを買収しようと目論んでいる。
ドーピング問題の責任を取ってNSBから追放された男が代表を務めており、買収劇は復讐戦争の側面を持っている。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884734267