• 現代ドラマ

ルワンダ出身の義足格闘家について(スーパイ・サーキット)

 そもそも主人公がバッコムという現代ペルーのスラムで編み出された格闘技術をベースにすること、また総合格闘技業界をメインに据えることを決めた段階では、ライバルキャラは近代総合格闘技術の先駆ともいうべきアメリカン拳法(american kenpo karate)を使うことしか決めていませんでした。
 ライバルとは別に義足の格闘家を登場させようと考え、ルワンダの資料を改めて調べたとき、シドニー五輪に出場したセザール・ルワガサナ選手のことを思い出しまして。
 同じ国に生まれた全ての人たちの思いを背負って戦った姿は、社会から隔絶されたスラムで孤独に主人公と対比になると考えた次第です。
 ルワンダ内戦については改めて解説する必要もないでしょうが、国家的悲劇を乗り越えて国民が一丸となるそのスケールはサブキャラではなく主人公と同等の規模で丹念に描くべきだろうと思い、アメリカン拳法使いの設定を組み合わせて生まれたのが本作のライバルキャラ、シロッコ・T・ンセンギマナです。
 打ち合わせの際にはグラウンドの攻防もある総合格闘技では義足の選手は厳しいのではないかという意見も出ました。
 アメリカン拳法の柔軟性を解説し、また彼に託したテーマも含めて理解していただけたとき、現代格闘技ものとしての方向性=リアリティの基準が決まったと感じました。
 ライバルが使う義足は武器が仕込んであるわけではありません。試合のときにはアスリート用の物を使用します。
 彼が拠点とするアメリカは身体にハンデを持つ人の支援にも積極的なので社会派ドラマという側面ともマッチする。ルールを整える主催者側のドラマも掘り下げられる。
 「社会の上に成り立つ格闘技イベント」というコンセプトとも噛み合って動き始めました。
 義足の総合格闘家という設定は極めて繊細な要素を含んでいます。
義肢についてもまだまだ僕は勉強が足りていません。それでも敢えてチャレンジできたのは、先述の通り、これが「現代格闘技」のお話だったから。
 プレゼンの末、「これで行きましょう」と言ってもらえたときには心が打ち震えたものです。
 ただ「国家的悲劇を背景に持つ義足の格闘家」という点で完結してしまうと主人公や受け手と長期間、共に歩むキャラとしては重くなりすぎるし、ルワンダの人たちの強靭さや陽気さを描けない。
 そこで心のゆとりとも言うべき"遊び"を設けようと思い、アニメファンという設定を加えました。
 せっかくならアニメファンという設定を最大限まで膨らませようと考え、もはや別企画と呼べるくらい発展していったのが先日、ツイートしておりました美少女バトルアニメ「異界神座イシュタロア」です。
(https://kakuyomu.jp/users/tenkawa_shinji/news/1177354054885128753)

 ンセンギマナというキャラは本作の「現代劇としての可能性」を拡げてくれたキーパーソンなのです。

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