百合、それは気高き花。
私は、百合というテーマが画一的な規範に縛られず、それぞれの参加作品にも孤高の存在であってほしいという願いを込めて、この言葉を本企画のキャッチコピーといたしました。

大変ありがたいことに、本企画は応募総数920作品と、様々な方にご参加いただきました。

応募作品を全て読ませていただき、とても面白い作品ばかりで鳥肌が立ちました。

ただ、正直に申し上げると、選考は非常に困難を極めました。

おそらく、この自主企画に参加いただいた作家の方々、参加作品を読まれた読者の方々も同様に一度は思われたでしょう、「はたして、これは百合なのだろうか…?」と。

しかし、同時に、私は、このように多種多様な作品が集まる「百合」という物語の無限の可能性を感じました。

そして、選考を通して、今では「百合と信じる者が存在すれば、百合である。」と確信しました。

つまり、書かれた方が「これは百合である」と信じて書けば、読まれた方が何と言おうと、それは「百合」であり、また、書かれた方が「百合」であるという自覚がなくても、読まれた方が「百合」と思った時点で「百合」なのです。創作におけるジャンルとは、本来それほどまでに自由であるということを、皆様による応募作品から改めて学ばせていただきました。

この真理に辿り着いてから、初めの作品に戻り、全ての応募作品を「百合」と信じて、選考させていただきました。

この企画を通して、これまでずっと「百合」を愛してきた人には、もう一度、「百合」というものを見つめる機会に。そして、初めて触れた方は、「百合」というジャンルを知る一つのきっかけになれば、こんなに嬉しいことはありません。

最後に、私が愛してやまない選考委員の方々(みかみてれん様、斜線堂有紀様、缶乃様)本当にありがとうございました(これからも拝読させていただきます)

そして、受賞者のプレゼントとして贈らせていただくことをご快諾いただいた、百合カフェアンカー様、本当にありがとうございました(これからも通わせていただきます)

この企画に参加いただいた、作家の方々、読者の方々、本当にありがとうございました。

次は百合コンテストで皆さんとお会いできるのを心から願っております。
(※編集部注 上記百合コンテストの開催については、あくまで担当者の願望以上でも以下でもございません。実際の開催如何につきましては、今後検討させていただきます。)

ピックアップ

ずっと眺めてた〈推し〉が話しかけてきたら、どうする?

  • ★★★ Excellent!!!

 本作は、ミステリアスな魅力をもつ花耶と彼女を推す彩都が出会い、毎週木曜日の夜だけ会う関係になる、というお話です。

 花耶のキャラクターに雰囲気があって好きでした。痩せすぎの体型、白い肌にハスキーな声、スマートな距離の詰め方、利便性よりもこだわりを貫く家具のチョイス。

 語り手が彩都である以上、彩都視点での花耶の見え方に乗っ取り、話は進んでいきます。それゆえに、後半になって学部の友人からは「三越花耶」と距離感を持ってフルネームで呼ばれる花耶の、彩都の視点の「外側」から見える一面があっけなく明らかになった時、彩都が受けた静かで大きな動揺の感情が、じんわり読者にも効いてくるように思いました。

 また、冒頭の炊き込みご飯の匂いがふっつらと漂う、湯気に包まれた描写がみずみずしいように、ところどころの表現がさりげなく美しいのもすてきでした。

(カクヨム公式自主企画「百合小説」/文=カクヨム運営スタッフA)

唯一無二の転生百合作品。

  • ★★★ Excellent!!!

姿かたちは変わっても、好きな人を愛する気持ちは本当に変わらないのかどうかという問いは、人類が古くより物語に書いてきたテーマだと思います。

ところが、本作は付き合っていた先輩が、実は別に好きな人(?)がいて、その子と学校から飛び降りて心中してしまった後に、亡くなったはずの先輩が会ったこともない幼馴染(?)に転生して、自分の家の中で再会するという、これまで見たこともないような、かなり異色の冒頭から物語は始まります。

外見は前世と全く異なる華奢な女の子になってしまっても、中身は前世と変わらないため、言葉や行動の節々から付き合っていた先輩だと認識できるような主人公に、先輩へ対する愛の深さを感じました。

また、ストーリーも次に何が起こるのか全くわからないような構成で、読んでいてとてもハラハラドキドキしました。特に最後は続きがかなり気になる終わり方をしており、すぐにでも続編が読みたくなるような作品でした。

(カクヨム公式自主企画「百合小説」/文=カクヨム運営スタッフY)

真面目な生徒会長と不真面目な先生のほんわか百合コメディー。

  • ★★★ Excellent!!!

真面目な人間と不真面目な人間の関係というのは、創作の王道といってもよいくらい多く描かれていますが、百合においてもまた鉄板の組み合わせだと思います。私が個人的にその組み合わせが好きということを抜きにしても、この作品は二人の会話劇がとにかく魅力的な作品となっております。

生徒会長の立場から不真面目な先生に注意しなければならないという義務感。しかし、先生のことが大好きでついつい言動に本音が含まれてしまうくらいの相反する気持ち。真面目な生徒会長の菫さんのデレのあふれるツンデレがとても可愛らしく、読んでいて思わず頬が緩んでしまうこと請け合いです。

また、誰にも見られることのない学園の隅っこで、あおい先生が菫さんに色々な悪いこと(コンビニアイスを食べるような可愛いことなのですが)を教えるという関係性も素敵で、まるでずっと読んでいたい、そんな気持ちにさせてもらえるような、あたたかい作品でした。

(カクヨム公式自主企画「百合小説」/文=カクヨム運営スタッフY)