エルフの学校に通う人間のポールは、エルフたちから虐待を受けていた。プライドも肉体も踏みにじられた彼は、同じく人間であるアンダーソン教授と知り合う。アンダーソン教授の研究分野は、エルフが毛嫌いする『魔導工学』 。その学問を知り、ポールは、取り憑かれたようにあるものの製作に打ち込む。やがてポールが取った行動とは……。
シビレた。 腹にズンとくるような深みのある文章の数々。「瑞々しい緑の枝条が意思を持つ蛇のごとく」 「醜悪な暗赤色の百足(むかで)のごとく」など比喩表現も鮮やか。漢字の使い方もかっこいい(手指にできるタコを「胼胝」と書くとは初めて知りました)。重厚にして精緻な文体を構築している。 本編登場アイテム「余燼(エミキ)」 が使われるシーンはただただ圧倒された。
タイトルの「棄冕 」とは、「高貴な冠を脱ぎ捨てる」 といった意味合いがあるのですね。幻想の時代から科学技術の時代への移行をダイナミックに描いています。果たして、その時代の到来はいいことなのか? それは、読む人の胸のうちに委ねられています。