この短編の中にすべてが掌握されております。
出会いから恋愛に至るまで、そして世の中で出回っている陰陽師作品では道満が晴明の悪として書かれているものが多いと思っておりますが(個人的な主観でごめんなさい)
こちらの作者様の書かれる道満は桜姫を想う美しい純粋な感情。
邪な部分から悪霊に取りつかれてしまうわけですが、これを祓うシーンがまた圧巻。
四神の登場シーン、そして何よりも桜姫がただ守られるだけの女性ではないという芯の強さもあり、ラストのシーンは美しいの一言に尽きます。
バトルと恋愛、どちらも十二分堪能させていただけます。
空気と地、風、花、情景が目に浮かぶ描写がとにかく卓越されているので、まるで映画のような作品です。
全ては、薄紅のはなびらに。
風に、空に、刃に、なにより桜の香りを薫らせる。
本作は、物語というより、形のない桜の詩のような作品である。
吉野の山里で交わされる幼い約束から、京の都を揺るがす出来事に至るまで、恋、守護、血縁、執着といった感情が、薄紅の花弁のように重ねられていく。それらは整理されて語られるのではなく、桜姫という存在を中心に、感覚として束ねられていく。
敵として立ちはだかる者もまた、守ろうとした人間であり、その想いが歪んだ結果として悲劇が生まれる。善悪の境界は曖昧で、誰もがそれぞれの立場から、同じひとりの少女を想っている。
終盤で選ばれるのは、力による制圧ではなく、想いによって満たすという道だ。拒絶も断罪もなく、ただ愛が差し出される。その結末は、最初から最後まで薫り続けていた桜の香りと、静かに呼応している。