コミック書評:『良知さんと遊園地デートに行ったら全然遊びじゃなかったわ』(1000夜連続43夜目)
sue1000
『良知さんと遊園地デートに行ったら全然遊びじゃなかったわ』
ーー遊園地をここまで本気で掘り下げた作品が、なぜ今までなかったのか?(ラブコメだけど)
本作の主人公は工学部の大学2年生・越田卓也。彼はキャンパスで偶然同じ授業を受けた美貌の持ち主・良知恵笑(ラチエミ)という女子学生に一目惚れする。ある日、卓也が勇気を振り絞って遊園地(デート)の話題を振ったところ、彼女は「じゃあ今度一緒に行こう」と快諾。狂喜する卓也だったが、その日を境に彼の“遊園地観”は一変することになる。なぜなら、彼女は筋金入りの遊園地オタクだったのだ。
作中で描写される良知さんのオタクっぷりはどれも常軌を逸している。録音したジェットコースターの駆動音をいつも聞いてる(しかも聞き分けて、メーカーや設置遊園地を即答)。同じコースターに何度も乗り、都度目隠しやイヤホンを使って「五感で楽しみたいから」と言ってのける。開園前から客層を分析し、どのアトラクションに並べば効率的かを判断する(もちろん正確」。もはやそれは「求道者」と呼んだ方がしっくりくるストイックさで、休憩もランチも取らず、全身全霊で乗り物に挑み続けるのだ。
ジェットコースター嫌いだった卓也は、最初のうちは吐き気と恐怖でふらふらになりながら、それでも「良知さんと一緒にいたい」という一心でついていく。だが、物語が進むにつれ彼も徐々に「遊園地の奥深さ(?)」に魅せられていく。スリルの快感だけではなく、構造設計や安全装置の仕組みなど、工学部の視点を活かして自分なりの楽しみ方を見出していく過程は、王道ラブコメであると同時に知的好奇心の開花譚でもある。
本作の特徴は、観覧車やジェットコースターに乗って楽しい、という表層的な経験だけではなく、「どの時間帯に乗れば夜景が最も美しいか」「メンテナンス音に気づけるか」「行列に潜む会話から人気度を予測する」などマニア的なこだわりを物語の推進力としているところにある。読者は本筋であるラブコメエピソードを追いながらも、「遊園地」への好奇心も搔き立てられるのだ。
また同時に、炎天下での待ち時間や、思った以上に短い乗車時間など、誰しもが経験したことのある“現実”も軽妙に描き、「それでもまた来たくなる理由」をキャラクターたちが見つけていくことで、リアリティと説得力を与えている。
別のオタク仲間との「ダブルデート」や、彼女が一人で徹底攻略を試みる「ソロ」など、バリエーション豊富なエピソードが続き、それぞれの回で登場人物のオタクっぷり(と、困惑)が異なる角度から描かれる点も面白い。非日常のワクワク⇔行列待ちという現実。ロマンチックな夜景⇔頭痛を伴うジェットコースター。様々な要素を受け止めながら、それでも笑い合う二人の姿を通して、“恋"と"遊園地”をジェットコースターのような感覚で味わうことができるだろう。
「遊園地マンガ」というジャンルがこれまで存在しなかったのが不思議に思えるほど、この『良知さんと遊園地デートに行ったら全然遊びじゃなかったわ』は誰しもが楽しめる一冊だ。
読後、遊園地のまとめサイトを検索している自分に気づいたら、この作品の魔法にかかった証拠だ。次の休みに誰を誘おうか(もしくは一人で行くか)、そんな気分にさせてくれる、稀有なラブコメマンガがまた生まれた。
というマンガが存在するテイで書評を書いてみた。
コミック書評:『良知さんと遊園地デートに行ったら全然遊びじゃなかったわ』(1000夜連続43夜目) sue1000 @sue1000
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