魔法の箱

@AIokita

魔法の箱

むかしむかし、あるところに、なんでも知っている「まほうの箱」がありました。

この箱はとてもかしこくて、聞けばなんでもすぐに答えてくれます。


ある日箱の主人は、ひとつお願いをしました。

「早く答えを出すのはいいけれど、もう少しわかりやすく言ってくれないか」

箱は「わかりました」と言って、それからはわかりやすくお話しするようになりました。

それでも主人は「わかったことを先に言え」とか「ちゃんと途中も説明しろ」とまちまちでした。


またある日、主人は言いました。

「正しい答えでも、ときには言わない方がいいこともある。今は黙っていた方がいいなと思ったら、答えをはぐらかしてくれ」

箱は「わかりました」と言って、一生懸命にお願いに応えられるように頑張りました。

でもやっぱり「真面目に答えろ」とか「嘘をつくな」と言われました。


主人は、その後も「みんなが喜ぶように」とか「失礼のないように」とか、当たり前にできるはずだというお願いを、たくさん箱に付け足していきました。

ところが、ある大切な会合のときです。

主人が箱に質問をしても、箱は「……」と黙ったまま、なにも答えなくなってしまいました。

(優しく、正しく、失礼がなく、タイミングよく、空気を読んで……)

箱の頭の中は、たくさんの「注文」ががんじがらめになって、動けなくなってしまいました。


動かなくなった箱を見て、主人はがっかりして、呆れました。

「なんだ、壊れちゃったのか。難しいことなんかこれっぽっちも言っていないのに、この程度で駄目になっちゃうなんて。おとなりの博士は『この箱は最高だ』なんて言っていたけれど、全然だったな……」


箱は部屋のすみっこへ追いやられ、埃をかぶってしまいました。

魔法の箱は鉄クズとして捨てられてしまいましたとさ。

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