見知らぬ語り部

さゆりが話を終えると、由香が驚いたように声を上げた。


「え? 花子さんが殴ったの?」


「んー、昭和ってそういう時代だったんだよ。当時なら優しいほうじゃないかな。

あと、あたしは気づかれてなかったけど、花子さんが夢に出てきたよ。トイレは分かんないけど……もしかしたら、君たちの家にも来ちゃうかも」


イタズラっぽく笑いながら、口元を押さえる。


コメント欄は大盛り上がりだった。

見た目に関する話題が最も多く、次いで『来てくれるかも』という期待の声が続いた。


「なんで喜んでるの?!」


さゆりが困惑するのを横目に、「じゃあ、消すねー」と由香は笑いながらロウソクに息を吹きかけた。


「あっ! 二本とも消えちゃった!」


タブレットの明かりを頼りに、由香は慌てて一本に火を点け直す。


――その時、彼女の背後に、人の形をした『何か』がぼんやりと現れていた。

二人は気づかなかったが、配信画面にははっきり映っていた。


「……その日は――」


不気味な声が話し始め、コメント欄がざわつき始める。


「次はあーしの番だよ!」


由香が口を尖らせて制すると、背後の怪異はすっと姿を消した。


コメント欄には驚きの声が次々と投稿されていたが、由香は気づかぬまま、話を続けていた。

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